農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第50回 野菜の病害防除42020年5月8日
4.べと病
(1)病原菌
ア.菌種病原菌はべん毛菌類に属する糸状菌(かび)であり、中温(20~25℃)を好むものが多いが、レタスべと病菌など低温(10~15℃)を好むものもいる。その適温と多湿な環境が重なると発生が多くなる。キュウリべと病菌はキュウリをはじめとしたウリ科野菜、キャベツべと病はキャベツをはじめとしたアブラナ科野菜に発生するなど、病原菌によって好みとする作物や科がある。主に土壌に残っている残渣等から遊走子のうをつくり、直接発芽や関節発芽(遊走子のうから遊走子を放出する)によって作物に感染する。
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イ.病徴一般に、発病初期に、葉の表面に境界が不明瞭な淡黄色の小斑点を生じる。病徴が進展すると葉脈で区切られた淡褐色の病斑となる。病斑の裏面に白色ないし灰白色のかびを生じているので葉裏を確認すると判別しやすい。多湿な環境下であれば葉が水浸状になって腐敗し、乾燥時には、病斑部が委縮したり、枯れ上がったりといった症状を起こす。
ウ.被害葉に発生し、葉の機能が失われ生育不良、枯れあがりの原因となり、収量、品質を大きく低下させる。
(2)生活環
被害作物とともに土壌中で越年し、被害作物残渣上に形成された遊走子のう(第一次伝染源)が直接発芽して感染するか、あるいは間接発芽によって遊走子を放出し、それが水を介して気孔から侵入し,二次伝染が起こる。作物に侵入した後は、病斑上に遊走子のうをつくり、降雨や灌水などの水の動きを介して伝染拡大していく。湿度が高く、肥切れしたり、樹勢が衰えている時などに発生が多くなる。
(3)防除法
ア.耕種的防除多湿が要因となって発病が多くなるので、できるだけ湿度を下げた栽培を心がける。また、土壌の跳ね上げや降雨など水の動きにのって感染が拡大するので、水の動きを少なくする。
(1)密植を避け、葉や茎が密集しないように間隔を空けて風通しを良くする。
(2)敷きワラ、マルチを行って、土壌からの跳ね上がりを防ぐ。露地栽培の場合は、可能であれば、雨よけ設備を設ける。
(3)送風や換気を行い、湿度が上がらないように工夫する。
(4)低湿地での栽培を避け、できるだけ高畝で栽培する。
(5)第一次伝染源を減らすよう、病斑のついた作物残渣は圃場外に出して処分する。(焼却が可能な地域であれば焼却するとよい)
イ.化学的防除
(1)発生前に予防効果主体の農薬で定期的な防除べと病は、一旦発生し始めると病勢が早く、一気に蔓延するので、気づいた時には既にかなりの面積で発生もしくは潜伏感染してしまうので、そうなる前に、発生前の予防散布を中心に組み立てるようにする。代表的な予防効果の高い農薬は、ジマンダイセンやペンコゼブなどのマンゼブ剤やダコニール、フロンサイド、アリエッティであり、これらを1作期の総使用回数制限に注意しながらで防除を組み立てる。その際、散布回数制限の無い銅剤も定期的に加えると効率的な防除体系が可能となる。
(2)初発確認後は早期防除を徹底する初発を確認したら、発生が少ない時に、治療効果のある有効成分を含む混合剤をできる限り早く、ほ場全体にまんべんなく散布するようにする。なぜなら、べと病は、1か所で発生が認められた場合には、病斑が認められなくともすでに広範囲に病原菌が拡がっている可能性が高く、また、感染から発病までの時間が数日と短いので、さらなる拡散を防止し、まだ感染していない株への感染を予防するために素早い対応が必要だからである。
(3)治療剤は系統の異なる農薬をローテーションで使用する治療剤には耐性菌がつきやすい傾向にあるので、同一治療剤の連続散布を避け、系統の異なる農薬を輪番で使うようにするとよい。その場合、治療剤単独での使用は避け、治療剤と作用性の異なる薬剤との混合剤の使用を徹底する。べと病菌にも耐性菌が発生している有効成分、地域があるので、使用の前に地域の指導機関等に有効な薬剤を確認するようにしてほしい。
以下に主なべと病防除剤の予防・治療の区別と残効性について整理したので参考にしてほしい。また、別表に農薬別作物別適用表を添付するので、薬剤選択の際の参考にしてほしい。ただし、その表は選択のためのものに限定し、実際の使用の場合は、農薬ラベルで使用方法を確認するようにしてほしい。
(4)土壌消毒の実施
べと病の第一次伝染源は、作物残渣などに残っている病原菌である。ほ場から作物残渣を手作業で完全に取り除くことは実際にはかなり骨の折れる仕事であるが、この点、土壌消毒であれば手作業よりも効率よく防除できる。 有効な土壌消毒法は、蒸気消毒、熱水消毒、太陽熱消毒、土壌還元消毒、土壌消毒剤(クロルピクリン、ソイリーン、ガスタード微粒剤など)の使用などである。土壌消毒は、他の病害虫との同時防除も狙えるので適宜実施すると効果的である。
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