農薬:防除学習帖
野菜の病害防除7【防除学習帖】第53回2020年5月29日
7.クラウドスポリウムが起こす野菜病害(キュウリ黒星病・トマト葉かび病)
(1)病原菌
ア.菌種
病原菌は、子のう菌類(または類縁)に属する糸状菌(かび)である。多湿を好み、密植や過度の灌水によって発生が多くなる。
本菌が引き起こす主な野菜病害は、キュウリ黒星病およびトマト(ミニトマト)葉かび病である。
イ.病徴
キュウリ黒星病は、生長点に近い部位の生育が悪くなり、わき芽が繁茂するようになる。病斑部には、黒色のかびが発生してヤニがでる。
トマト(ミニトマト)葉かび病は、葉に発生する。葉表に淡黄色の小斑点が発生し、その裏には、緑褐色のビロード状のかびが密に発生する。
ウ.被害
生育不良になって、収量と品質の低下を起こす。ひどい場合には枯死する。
(表1)野菜の主な野菜の主なクラドスポリウム病害とその生態
(2)生活環
被害茎葉や種子、あるいは栽培に使用された資材に付着した菌糸が越冬して第一伝染源となる。発病後に病斑上に大量の分生胞子をつくり、それが風によって飛散し、2週間の潜伏期間後に発病し、そこでまた大量の分生胞子をつくって飛散し蔓延する。
密植栽培や過度の灌水など多湿条件がそろうと発生が多くなる。
(3)防除法
ア.耕種的防除
多湿にならないように管理することで、発生を少なくすることができるので、次の対策の内、実行可能なものを積極的に行う。
(1)窒素質(N)肥料のあげすぎ(葉色が濃緑になる)は発病を助長するので、土壌診断に基づいた適正施肥を行う。
(2)分生胞子を拡散させないようにするため、早期発見を心がけ、病斑を見つけたらできるだけ速やかに取り除く。
(3)風通しを良くして、灌水や排水に注意して、過湿にならないようにする。
(4)資材を再利用する際には、前作の残渣などが残っていないように十分に洗浄する。
イ.化学的防除
(1)効果のある有効成分主要な効果のある有効成分は以下のとおり。
他の病害と同様に発生が多くなった後では、たとえ治療効果のある薬剤でも十分な効果を発揮することが難しい。効率的に防除するには、予防効果のある薬剤の定期散布を基本とし、病害が発生したら、発生初期のまだ病害が少ないうちに治療効果のある薬剤を使用して徹底防除を行うとよい。
「病害蔓延後に使用しても効果が期待できる治療剤は無い」と考え、早め早めの予防剤あるいは治療剤に予防剤が混合された剤によるローテーション散布が最も重要である。治療剤については、耐性菌の発生が認められている薬剤もあるので、念のため、指導機関に発生状況を確認し、指導をあおぐようにする。
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