農薬:防除学習帖
野菜の害虫防除1【防除学習帖】第66回2020年8月28日
今回から野菜の害虫防除について紹介する。
害虫の定義等は、シリーズNo.10~14を参照してほしい。
害虫は、多犯性で多くの種類の作物を加害するものが多く、害虫ごとに防除法が似かよっている場合が多いので、害虫別に防除法を整理する。
その第一弾として、アブラムシの防除を紹介する。
1.野菜類に発生する主なアブラムシ
アブラムシ類は主に春夏野菜の代表的な害虫だ。種類としては、ワタアブラムシやモモアカアブラムシなどの発生が多いが、特にワタアブラムシは、6月~8月が発生のピークとなり、年に10数回も発生する厄介な害虫である。モモアカアブラムシは、多くの作物に寄生し、4月上旬から5月下旬に発生が最も多くなる。
2.形態と生態
アブラムシは、どの種も多くの野菜を加害し、単為生殖(メスが交尾をせずに子供を産み続ける)を行うため、何度も発生する(世代を繰り返す)。このため、一度増殖が開始されると短い期間に数が一気に増加するのが特徴である。
また、アブラムシ類の厄介なところは、各種ウイルス病を媒介することである。キュウリモザイク病などの病原体を保毒していると、作物から吸汁する時にウイルスを作物にうつしてしまうので、できるだけ早期に防除を徹底して行う必要がある。
3.防除法
(1) 耕種的防除法
アブラムシは、増殖が速いため、発見したらできるだけ早く駆除する必要がある。メインは農薬で行うことになるが、以下に示す耕種的防除を組み合わせ、できるだけアブラムシの密度を低くしてから農薬を使用するとより効果も安定する。
ア.物理的防除
害虫を手で捕まえて殺したり、防虫ネット(不織布等)で作物を覆ったり、ハウスの側窓をメッシュの細かい網で覆ったりして害虫を作物に物理的に近づけないといった方法で害虫を防除する方法である。
(ア)捕殺
文字通り、害虫を捕まえて殺すことである。アブラムシの場合は、小さくて捕まえることは難しいので、絵筆等で払い落したり、強い水流で洗い流したり、指で押しつぶすなどの方法がある。いずれも手間がかかるが、安全・確実な方法ではある。しかし、アブラムシの数が増えたり、広いほ場で満遍なく防除するには効率が悪すぎる。家庭菜園程度の面積であればまだしも、面積が大きくなるととても捕殺では害虫を防ぎきれないことは容易に想像できる。
(イ)防虫ネット
露地物の葉物野菜の栽培などでよく使われる方法だ。べたがけ資材(不織布)で作物をすっぽり覆って、害虫を作物に寄せ付けない方法であり、ホウレンソウやコマツナなどの葉菜類の害虫防除でよく使われる。ただし、日照が不足するため、十分な日照を必要とする作物では使えないこともある。
(ウ)防虫網
ハウスの側窓や天窓をメッシュの細かい網で覆い、羽根アブラムシが侵入しないようにする方法である。ただし、メッシュを細かくしすぎた結果、ハウス内温度が高くなり過ぎて農作物の収量低下、品質低下を招いてしまう恐れがあるので注意する。
(エ)光・色の利用
害虫は特定の光(波長)や色に対して反応することが多い。アブラムシは、銀色の光を嫌がる性質があるため、マルチをシルバーマルチにすることで、作物にアブラムシが寄り付きにくくなる。
一方、黄色にアブラムシ好んで集まることを利用し、黄色に着色した粘着板や粘着シート(ハエ取り紙みたいなもの)で害虫をおびき寄せ、捕殺する資材もある。ただし、いくら集まってくるとはいっても粘着板・シートだけでは防除しきれないので、他の方法と組み合わせて行う必要がある。
(オ)気門封鎖剤の利用
水あめなどでアブラムシの気門を物理的にふさいで窒息させる方法である。使用する農薬は、気門封鎖剤と呼ばれるものであるが、天然成分で物理的にアブラムシを駆除するため、使用回数に制限がないことから、ここでは耕種的防除の一種に加えている。(薬剤の一覧には掲載した)
(クリックでPDFをダウンロード)
(2)薬剤防除
アブラムシに効果のある有効成分を薬剤系列別に示した。作物別登録農薬一覧は別紙のとおり。
アブラムシは単為生殖で、世代交代のスピードが速く、何度も発生するので、このように、何度も発生する(世代を繰り返す)ので、1回の防除で収まることは少なく、発生が多い時期には、農薬の残効期間を顧慮しながらの定期的な防除が不可欠である。
また、薬剤抵抗性の発達も早く、既に多くの害虫に抵抗性の発達事例があるので、抵抗性の発達状況は使用する前に指導機関等に確認するようにしてほしい。優れた農薬を長く使用できるようにするためにも、系統の異なる薬剤をローテーションで使用するなど、抵抗性発達対策を確実に行ってほしい。
このシリーズの一覧は以下のリンクをご覧ください
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