農薬:防除学習帖
農薬の上手な施用法4【防除学習帖】第84回2021年1月8日
前回、農薬製剤にはたくさんの種類があり、また使用方法によっては、隣接する作物への飛散(ドリフト)に十分に注意しないと農薬取締法違反になる可能性があることを紹介した。
今回は、農薬の飛散のメカニズムとその回避方法について整理してみる。
1.農薬の散布粒子
農薬はどの散布方法であっても、粒子をなんらかの方法で散布している。
粒子というと、粒剤などを想像し、水で希釈する場合にはイメージがつきにくいかもしれないが、散布ノズルから噴出される水滴は農薬希釈液の粒子状になっており、立派な粒子である。例えば、一般のノズルでの噴霧の霧は、平均直径200~300μm程度の粒子になっている。一方粉剤も粒子であり、粉剤が平均10um程度、DL粉剤(ドリフトレス粉剤)が平均20um程度の直径の粒子である。これらの粒子は、極小さいので、空気中を漂っている時には霧状や煙状に見えるのである。
そして、農薬は、その散布する際の粒子の大きさによって、効果、作物への付着状況、到達距離、飛散(ドリフト)距離が影響を受ける。
(1)効果
農薬は有効成分が害虫や病原菌が触れる機会が多い方が効果は出やすくなるので、作物表面に均一に隙間なくびっしり付着している方がよい。このような散布状況は、散布粒子が小さい方が作りやすくなる。このため、一般的に散布粒子が小さい方が効果は高くなる。
(2)作物への付着状況
作物への付着も、散布粒子が小さい方が多くなる。なぜなら、作物の表面には、目には見えないが突起物や微毛などがあり意外とデコボコしている。粒子が小さければ、このようなデコボコにも入り込むことができ、付着しやすくなる。
(3)到達距離
散布を効率よくやろうと思えば、長い距離を飛ばせると良い。例えば、水田であれ ば片方の畦畔から向こう側の畦畔まで農薬を飛ばすことができれば片方の畦畔をあるくだけで散布が終了するので、効率的である。
この農薬の到達距離も粒径が大きく影響する。粒径が小さいほど風に乗って遠くに飛ばすことができるが、必要以上に飛んでしまうとドリフトにつながるので、農薬の製剤をつくる場合には、どのくらい飛べば効率よく防除でき、ドリフトを抑えることができるかを考慮しながら検討されている。
(4)飛散(ドリフト)
(3)でも紹介したように、粒子が小さいほど遠くまで飛ぶ。あるデータでは、3umの水滴(粒子)は、3mの高さから平均風速1.33mの風に乗ると10kmも飛ぶとされており、実際の霧状散布の水滴(粒径100um)でも同じ風速で10m飛ぶ。風速1.33mというのは微風状態であり、散布可能な風速であるにも関わらず水滴が10mも飛ぶということは、圃場の端などの散布では当然隣接の圃場に薬液が飛ぶことを想定しなければならない。
2.ドリフトの防止方法
(1)剤型の選択:ドリフトリスクの低い製剤を選ぶ
水和剤や液剤など水で希釈して散布する製剤は、当然ドリフト対策を当然行わなければならないが、粒径の大きなものをそのまま散布する粒剤であれば、ドリフトのリスクは格段に減る。さらに言えば、ジャンボ剤や水口処理剤などはさらにドリフトのリスクを減らせる剤型である。用途や薬剤によって対応している剤型はまちまちであるが、このような製剤が設定してある農薬であれば積極的に活用してほしい。
また、粒剤はドリフトのリスクはかなり小さいが、畦畔噴頭など遠くまで飛ばすことを目的に作られた器具を使う場合は、圃場を通り超えて隣接圃に飛び込まないよう注意が必要であるし、まれではあるが動噴内で粒がぶつかって崩れて粉状になる(粉化という)ことがあり、その粉状のものが遠くまで知らずに飛ぶことがあるので注意が必要である。特に低濃度で効果を示す水稲除草剤などの散布の際は注意が必要である。
(2)物理的に防ぐ:暴風ネットや覆いをかける
散布液が風に乗って飛んでくるので、それを防ぐように隣との間に防風ネットを設置したり、かかってほしくない作物にあらかじめ不織布ネットなどをかけて飛散してきた農薬がかからないように物理的に防ぐ。確実ではあるが、手間と費用がかかるのが難点である。実際には、果樹防除や小面積の無農薬栽培圃場などへの飛散防止対応などに使われている。
(3)農薬の選択:隣接圃場にも登録のある農薬を使用する。
農薬取締法は、登録作物を遵守事項にしているので、近隣の作物を調べ、もし万が一飛散してしまっても農薬取締法違反とならないように、隣接圃場の作物にも登録のある農薬がある場合はそれを選ぶようにする。ただしその場合でも、効果面や使用回数制限の面などを考慮すると使えない場合もあるので、この手段が使えるのはレアケースになることが多い。
(4)飛散が少ない散布方法を選ぶ:少水量散布法、飛散防止カバー、霧無ノズルの資料など
飛散を少なくする技術も開発されているので、それらが利用できる場合は積極的に利用する。特に水希釈散布の場合、水滴を大きくして霧状の小さな水滴を減らすことができる霧無ノズルを使用するだけで、かなりドリフトを減らせるし、少水量散布であれば、さらにドリフトが減らせる。ただし、これらを使用した場合、農薬の有効成分によっては、十分な効果を発揮できない場合もあるので、農薬の散布方法に関する注意事項欄をよく読んで、その農薬にあった散布法を選ぶように心掛ける。
この他、対策の詳細が日本植物防疫協会ホームページに詳しく掲載されているので参考にしてほしい。(以下表参照)

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