農薬:防除学習帖
トマトの防除暦7【防除学習帖】第141回2022年3月11日
現在、本稿ではトマトを題材に防除暦の作成に取り組んでいる。病害虫雑草は、地域やほ場単位で発生する種類、程度、時期等が異なっていることを考慮し、できるだけ共通する病害虫や問題病害虫を、栽培開始から発生する順に取り上げながら、活用できる防除法や利用する場合の留意点を紹介している。
今回から、定植以降発生する病害虫の防除についてひも解いていており、まず第2弾は、トマトの葉かび病を紹介する。
1.病原と生態
トマト葉かび病は、Cladosporium fulvumという糸状菌によって起こる病害で、20~25℃で密植栽培や過度の灌水など多湿条件や葉色が濃い(窒素過多)といった条件の時に発生が多くなる。
トマトの葉に発生し、最初、葉表に淡黄色の小斑点が発生し、その裏には、緑褐色のビロード状のかびが密に発生する。トマトの生育が不良になって、収量と品質の低下を起こし、ひどい場合には株が枯死する。
被害茎葉や種子、あるいは栽培に使用された資材に付着した菌糸が越冬して第一伝染源となる。発病後に病斑上に大量の分生胞子をつくり、それが風によって飛散し、2週間の潜伏期間後に発病し、そこでまた大量の分生胞子をつくって飛散し蔓延する。
2.防除法
(1)耕種的防除
多湿にならないように管理することで、発生を少なくすることができるので、湿度管理を中心に対策を行う。次のポイントを参考に、できれば複数組み合わせて実施すると良い。
① 窒素質(N)肥料のあげすぎ(葉色が濃緑になる)は発病を助長するので、土壌診断に基づいた適正施肥を行う。
② 分生胞子を拡散させないようにするため、早期発見を心がけ、病斑を見つけたらできるだけ速やかに取り除く。
③ 風通しを良くして、灌水や排水に注意して、過湿にならないようにする。
④ 資材を再利用する際には、前作の残渣などが残っていないように十分に洗浄する。
(2)化学的防除
効果のある主な有効成分は、次表のとおりである。
病斑に作られる胞子の量が多く、発生が多くなった後では、たとえ治療効果のある薬剤でも十分な効果を発揮できない。「病害蔓延後に使用しても効果が期待できる治療剤は無い」と考え、予防効果のある薬剤の定期散布を基本とし、病害が発生したら、発生初期のまだ病害が少ないうちに治療効果のある薬剤を使用して徹底防除を行うようにする。
治療剤については、耐性菌の発生が認められている薬剤もあるので、念のため、指導機関に発生状況を確認し、指導をあおぐとともに、作用性の異なる薬剤でのローテーション散布を基本とする。
また、土壌中に病原菌が存在するので、土壌消毒を行うことで、病原菌の密度を減らすことができるので、他の病害虫防除と合わせて土壌消毒を実施すると効果的である。
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