農薬:防除学習帖
みどり戦略に対応した防除戦略(19)トマト栽培の雑草防除【防除学習帖】 第225回2023年11月18日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にKPIをクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上で、みどりの食料システム法のKPIをクリアできる方法がないかを探ろうとしている。
現在、農薬の使用量も多く、出荷量も多いトマトを題材にして、どんなリスク換算量の低減方策があるのか探っており、まずは、トマトの防除タイミング(場面)ごとにリスク換算量を減らす方策にどんなものがあるか検証している。検証する防除タイミングは、①苗の本圃への植付前、②育苗期後半~植付時、③生育期の3つであり、前回から③の生育期に使用する農薬について検証しており、具体的な対象病害虫別に検証してみる。今回は、雑草防除について検証する。
1. 除草剤使用場面
トマト栽培において、除草剤は主に露地栽培で使用され、施設栽培、特に隔離床栽培やロックウール栽培では除草剤を使用される場面はほとんどない。露地栽培における除草剤の使用時期は、定植前、定植直後、生育期、生育期畝間処理である。定植前や定植直後、トマト生育期に使用する除草剤は登録数が少なく、使用する除草剤の変更による対策は意味がなく、栽培方法の変更や除草シートの設置などで対応する方が得策だ。
また、非選択性茎葉処理除草剤の使用場面は、耕起前にほ場に生えている雑草を一掃する場合や、ハウス回りの雑草防除が主なものである。
最近は、トマトに薬液がかからないように工夫された特殊なアタッチメントを装着して散布する、畝間散布といった散布方法がある。非選択性茎葉処理除草剤については、多くの製品があり、その有効成分でリスク換算量に違いがあるので、薬剤の変更でリスク換算量を減らすことができる可能性はある。
しかし、薬剤を変更してもリスク換算量はそう大きく変わりはないので、やはり効果や使用勝手を優先した方が良いだろう。
主な除草剤のリスク換算量は以下とおり。

2.みどりの食料システム法対応の検討
トマトの場合使用する除草剤はあまり多くないので、除草効果や使用場面を優先して考えるようにし、リスク換算量はあまり意識しない方が良いだろう。殺虫剤や殺菌剤の生育期防除同様に、必要な除草剤は確実に使用するようにし、栽培全体を考えた対策を考えた方が良い。
もし、あえてリスク換算量を生育期に考えるとするならば、下記のような対策が考えられるので、必要に応じて検討してほしい。しかし、繰り返しになるが、除草効果が落ちないことを最優先にしてほしい。
(1) 栽培方式を変更する
トマトで使用される除草剤は、露地栽培での使用が主なので、除草剤でリスク換算量を減らすとすれば、施設栽培や、隔離床養液栽培など、除草剤を使用せずに済む栽培方式に取り組むことでリスク換算量を減らすことができる。
ただし、栽培方式の変更は、多額の資金が必要になることも多いので、経営状況に応じて可能な場合は検討するとよい。
(2) 薬剤の1回当たりの処理量を減らす
殺虫剤や殺菌剤同様に、使用量に幅が持たせてある場合がある。除草剤の場合、10aあたりの製剤投下量で登録されているので、これまで投下量の最大量で使用していた場合には、最小量に変えることでリスク換算量を減らすことができる。
ただし、その場合は、効果が少なくなったりする場合もあるので、除草効果を最優先とし、発生量が例年より少ないなど少ない薬量でも効果が保たれると判断できる場合に限って使用量を減らすようにしてほしい。
(3) リスク換算量の少ない薬剤を使用する
殺虫剤、殺菌剤同様に、よりリスク換算量の少ない除草剤を使用するようにすればリスク換算量を減らすことができる。選択の余地があるのは、非選択性茎葉処理剤であるので候補剤の中からリスク換算量の少ない薬剤を選ぶと良い。B液剤で畝間処理しているようであれば、C液剤に変更することで畝間処理のリスク換算量を4分の1に減らすことができる。
(4) 農薬以外の除草資材を使用する
除草剤に頼らない技術として最も多いのは除草シートの敷設やマルチングであろう。雑草も植物であるので、光合成によって生育に必要なエネルギーを得ている。そのため、太陽光を遮ってやれば雑草といえど正常な生育はできなくなる。
通常のトマト栽培では、土壌病害の蔓延を防ぐために土壌の露出部分をビニルマルチや敷ワラなどで覆い、泥はねを防いでいるが、これが雑草に太陽光が到達するのを防ぎ、光合成ができなくなって結果として除草効果も発揮する。防草シートの敷設も同様の原理であるので、これらの資材を使用することで、農薬の使用量ゼロで除草効果を得ることができる。
ただし、除草シートの場合は、大きな面積をカバー使用とすると多くの資金が必要となるので、費用対効果を十分に考慮して導入を検討してほしい。
その他、熱水処理や蒸気消毒など熱で除草する技術もあるので、費用面を考慮して、病害虫防除と合わせてメリットがあり、収支が合うようであれば検討するとよい。
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