農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(20)【防除学習帖】 第259回2024年7月20日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。IPM防除は、①化学的防除、②生物的防除、③物理的防除、④耕種的防除の4つの防除法を効率よく組み合わせて、作物の生産圃場を病害虫雑草が生きていきづらい環境、いわゆる病害虫雑草自身の生命活動を維持しにくい環境にすることで防除効果を発揮しようというものだ。このため、病原菌種別や害虫種別、雑草種別に使えるIPM技術を整理すると、作物が異なっても応用しやすくなるので、病害虫雑草別にIPM防除法の組み立て方を検討しており、現在は糸状菌の病原菌種とその増殖、侵入、伝染方法を明らかにしながら使用するIPM技術を整理している。
前回までに糸状菌4菌類の生態と防除ポイントについて紹介した。今回は糸状菌の次に多い細菌の生態と防除のポイントを紹介する。
1. 細菌類の生態
細菌は、核膜の無い単細胞で2分裂によって増殖する原核生物と呼ばれるものである。植物病原細菌は長さ1~5μm、幅0.5~1μmの桿状の形態をしている。多くの細菌が運動器官としてべん毛を持ち、それが桿状の体の1端から出ているものを単極毛、両端から出ているものを両極毛、桿状の体の周囲から出ているものを周毛と呼んで区別している。一旦作物内に侵入して増殖すると、作物体内で毒素や酵素、ホルモンなどの発病因子をつくり、作物に萎凋や軟腐、斑点、条斑、肥大、奇形といった病徴を発生させる。生育適温や高湿度、栄養環境など増殖に好適な条件が整えば爆発的に増殖し、侵入から1日~2日で病斑を形成させる場合もある。病斑が見つかった時には既に多くの場所で侵入が起こっており、手遅れで病勢を抑えるのに大きな困難を伴うことが多い。
このため、感染させないための予防防除が細菌病防除の基本であり、病原菌が作物に侵入後の防除、いわゆる治療的な防除は不可能と考えた方がよい。
2.細菌の侵入方法と活用できる防除法
病原細菌は、作物の水孔、腺毛、気孔などの植物体開口部に加え、風雨による茎葉の擦れや害虫の食害、人の管理作業などによってできた傷口などの自然開口部から侵入する。糸状菌のように、開口部ではない部位に自ら穴を開けて侵入するような芸当はできない。
このため、細菌の侵入を防ぐには、細菌を含む水滴や跳ね上げられたドロなどを自然開口部に届かせないことと、いかに作物を傷つけない(傷口を発生させない)ようにすることが重要である。
[活用できる防除法]
- 雨水や灌水による土壌の跳ね上げを防ぐためマルチングを行う。(物理的防除)
- 点滴灌水などドロ跳ねの無い灌水方法に変更する。(耕種的防除)
- 防風ネットを設置するなどして風を防ぎ、風による擦れ傷を減らす。(耕種的防除)
- 銅剤や微生物農薬といった適用農薬を予防的に散布する。(生物的防除・化学的防除)
3. 細菌の増殖方法と活用できる防除法
細菌の増殖に適した条件は、高温多湿であり、梅雨から秋にかけて高温多雨の時発病が多くなる。
自然開口部から侵入した細菌は、作物の体内で2分裂で急激に増殖して作物に様々な症状を引き起こすようになる。細菌の侵入と増殖には水分が必要なので、できるだけ湿度を下げて、作物体上、特に傷口上に水滴が付かないように管理することが重要だ。夏場に温度を下げたりすることは不可能なので、作物間の湿度を下げることに全力を注ぐ。
[活用できる防除法]
- 株間をできるだけ開けて風通しを良くする。これは作物同士の接触を減らせるので傷口ができるのを防ぐことにも効果がある。(耕種的防除)
- 全面マルチをして土壌表面からの水分の蒸散を防ぐ。(耕種的防除)
4.細菌の伝染方法と活用できる防除法
細菌の伝染には何らかの伝搬媒体が必要である。その伝搬媒体となるものが、灌漑水、風雨、浸冠水、飛沫、管理作業、耕耘、管理器具の接触などがある。細菌は糸状菌の胞子のように長距離を飛散して蔓延していくことは無いが、台風などではより強い風により細菌を含む雨滴などが遠くに飛散し、感染が拡大することもあるので、強風が吹いた後などは特に注意が必要だ。
[活用できる防除法]
- 浸冠水を防ぎきることは難しいが、大雨等により浸冠水が予想される時は圃場回りに土嚢を積むなど回避措置を実施する。(耕種的防除)
- 管理作業を行う場合は、発病株を触ったあとに健全株を触ったりしないようにして注意して作業する。(耕種的防除)
- 発病圃場を耕耘した場合は、必ず機械の徹底洗浄を実施し、細菌の付着した土壌を他の健全圃場に持ち込まないよう注意徹底する。(耕種的防除)
- 管理器具についた細菌が感染源になることがあるので、可能ならば都度消毒しながら管理を行い、感染株を管理した器具を消毒せずに健全株の管理に使用するようなことは決して行わない。(耕種的防除)
- 作物の生育期には、前回の防除後に発生した新しい茎葉を保護するため、銅剤や微生物農薬などの細菌病適用農薬を定期的に予防散布する。(生物的防除・化学的防除)
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