農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(70)【防除学習帖】第309回2025年8月2日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
31.MBI-R
(1)作用機構:[I]細胞壁のメラニン生合成
(2)作用点: メラニン生合成の還元酵素
(3)グループ名:MBI-R:FRACコード[16.1]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
MBI-Rには、現在のところ、3つの化学グループがあり、その化学グループおよび有効成分名、農薬名については以下のとおりである。
[1]イソベンゾフラノン/フサライド(ラブサイド)
[2]ピロロキノリノン/ピロキロン(コラトップ)
[3]トリアゾロベンゾチアゾール/トリシクラゾール(ビーム)
(7)グループの特性:
イネいもち病菌に特異的な作用を示し、イネいもち病菌が稲体に侵入する際に付着器内の膨圧を上げるために必要なメラニンの生合成を阻害し、膨圧をあげることができずにイネいもち病菌の稲体への侵入を阻止することにより防除効果を示す。いずれの薬剤も発病前の予防的散布が基本中の基本だが、浸透移行性が強いピロキロンやトリシクラゾールについては、病斑上の胞子形成を阻害する効果も有しており、結果として2次感染防止効果も合わせ持つ。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するフサライドのリスク換算係数は0.316で基準年出荷量に基づくリスク換算量は32.3トンである。ピロキロンのリスク換算係数は0.316で基準年出荷量に基づくリスク換算量は30.7トンである。トリシクラゾールのリスク換算係数は0.316で基準年出荷量に基づくリスク換算量は18.5トンである。
このグループ各有効成分のリスク換算出荷量は、基準年のリスク換算量全体から見ても0.1%未満と極少なく、加えて被害の大きいイネいもち病の特効薬であり、耐性菌の発生も無いことから、いもち病の基幹防除剤として使用を続ける方が得策だと考える。
(9)MBI-Rの農薬登録がある主要病原菌一覧
MBI-Rの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。

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