農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(73)【防除学習帖】第312回2025年8月23日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っているが、そのことを実現するのに必要なツールなり技術を確立するには、やはりIPM防除の有効活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探っている。
みどり戦略対策に向けたIPM防除でも、必要な場面では化学的防除を使用し、化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせて防除効果の最大化を狙うのだが、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できるようにするためには、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理すると、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道が探れると考えている。そのため、有効成分の作用機構ごとに分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
34.ベンゾイソチアゾール
(1)作用機構:[P]宿主植物の抵抗性誘導
(2)作用点: サリチル酸シグナル伝達
(3)グループ名:ベンゾイソチアゾール/FRACコード[P2]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
ベンゾイソチアゾールには、現在のところ、1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。 [1]ベンゾイソチアゾール/プロベナゾール(オリゼメート)
(7)グループの特性:
このグループに属する有効成分プロベナゾールは、稲病害並びに野菜の細菌性病害に効果を示す。イネいもち病菌に対し直接的な抗菌活性は無いが、プロベナゾールが稲に処理されることによって、イネいもち病感染時に抵抗性発現に関与する酵素"フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)"を活性化させることや、同病原菌の感染に関係なく発動する特定の抵抗性遺伝子が活性化することで病原菌に対する抵抗性を発揮する。
プロベナゾールはイネいもち病菌が稲に感染しようとすると、稲の細胞に活性酸素を発生させ、過敏感反応による細胞死を引き起こし同菌の感染を阻止する。その他、ファイトアレキシンや酸化脂肪酸などの抗菌物質が産生されるのに加え、宿主細胞のリグニン化を進行させて物理化学的な障壁を形成して全身抵抗性を獲得させて防除効果を発揮する。
病害の感染前に病害抵抗性を誘導させることが必要なので、病害発生前に予防散布を確実に実施する必要がある。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するプロベナゾールのリスク換算係数は0.316と中リスクの部類であるがイネいもち病防除の基幹防除剤として全国各地で使用されている。基準年のリスク換算量は、217トンに上り、基準年の農薬全体のリスク換算量総数の0.9%を占めるなど使用量は多い。
しかしながら、環境影響リスクは少ない有効成分であることに加え、耐性菌の発生リスクがほとんど無く、野菜類の細菌病にも効果を示す貴重な薬剤であることから、削減を考えることなく使用を継続する方が得策である。
(9)の農薬登録がある主要病原菌一覧
ベンゾイソチアゾールの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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