農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(75)【防除学習帖】第314回2025年9月6日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
35.ホスホナート
(1)作用機構:[P]宿主植物の抵抗性誘導
(2)作用点: ホスホナート
(3)グループ名:ホスホナート/FRACコード[P7]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:実被害のある事例報告無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]エチルホスホナート/ホセチル(アリエッティ)
(7)グループの特性:
ホスホナートが作物の細胞に作用し、細胞壁を強化するなどして、病原菌に対する抵抗力を高めたり、胞子形成を阻害したりする。浸透移行性に優れ、ホセチル処理部位から上部や下部に浸透移行して作物体全体に行き渡り、長期に安定した予防効果を発揮する。加えて、胞子形成を阻害することから、発病後に処理されても病害の蔓延を阻止する効果が期待できる。しかし、その場合は病原菌が胞子を形成する前に処理する必要があるので、発病を確認したら速やかに使用しないと効果不足になる可能性があることに加え、抵抗性誘導による病害阻止効果の方が大きいので、できるだけ予防的に散布する方が効果も安定する。
野菜類や果樹類の卵菌類(べと病、疫病、ピシウム病)に高い効果を発揮し、アルタニア属菌など卵菌類以外の糸状菌の1部にも効果を発揮する。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するホセチルのリスク換算係数は、0.316と中リスクの部類であるが、イネいもち病防除の基幹防除剤として全国各地で使用されていることと、基準年のリスク換算量はそれぞれ、22.6トンと基準年の農薬全体のリスク換算量総数からするとごく少なく、環境リスクは低い農薬であると考えられる。
このことに加え、耐性菌の発生リスクがほとんど無く、防除薬剤の少ない卵菌類病に安定した効果を示す貴重な薬剤であることから、削減を考えることなく使用を継続する方が得策である。
(9)エチルホスホナートの農薬登録がある主要病原菌一覧
エチルホスホナートの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。実際の使用前には必ず農薬ラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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