農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(78)【防除学習帖】第317回2025年9月27日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
なお、前号(No.316)36.シアノアセトアミド=オキシムの (2)作用点:を"不明"と表記しなければならないところ誤って"サリチル酸シグナル伝達"と誤って表記した。訂正してお詫び申し上げる。
37.ベンゼンスルホン酸
(1)作用機構:[U]不明
(2)作用点:不明
(3)グループ名:ベンゼンスルホン酸/FRACコード[36]
(4)殺菌剤の耐性リスク:低
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]:ベンゼンスルホン酸/フルスルファミド(ネビジン、スキャブロック、ネビライト、ネビリュウ)
(7)グループの特性:
フルスルファミドは、根こぶ病菌(変形菌)やそうか病(放線菌)といった土壌伝染性病害に活性を示す土壌処理殺菌剤である。作用機構および作用点は不明であるが、特に根こぶ病菌の1次感染源である休眠胞子の発芽を阻害し、アブラナ科野菜の根毛への根こぶ病菌の感染を防ぐ。
休眠胞子に薬剤が接触してはじめて効果を発揮するので、安定した効果を発揮させるためには土壌内での均一な分散(混和)が必要である。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するフルスルファミドのリスク換算係数は1で基準年のリスク換算量は
10.3トンである。リスク換算量総量に与える影響度は少ないことと、難防除土壌病害に効果を示す貴重な殺菌剤であり、耐性菌発達リスクも低いことから、本剤は従来どおり使用する方が得策と考えられる。
(9)フルスルファミドの農薬登録がある主要病原菌一覧
フルスルファミドの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。 実際の使用前には必ず製品のラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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