農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(80)【防除学習帖】第319回2025年10月11日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
38.フェニルアセトアミド
(1)作用機構:[U]不明
(2)作用点:不明
(3)グループ名:チアゾリジン/FRACコード[U13]
(4)殺菌剤の耐性リスク:中
(5)耐性菌の発生状況:うどんこ病菌で耐性菌の発生あり
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループおよび有効成分名、農薬名がある。
[1]:チアゾリジン/フルチアニル(ガッテン)
(7)グループの特性:
このグループに属するフルチアニルは、野菜類や樹木類、花卉類のうどんこ病に高い活性を示し、優れた予防効果と残効性を有するが浸透移行性はない。作用性は不明だが、うどんこ病菌の吸器の形成および吸器からの栄養吸収を阻害することにより、病斑拡大と分生胞子形成、分生胞子離脱を阻害し、2次感染を防ぐ作用が強い。
DMI剤やQoI剤など既存他剤の薬剤に対して耐性を発達させたうどんこ病菌にも高い効果を示す。ただし、フルチアニルに対する耐性うどんこ病菌が報告されているので、作用性の異なる薬剤との混合剤を使用したり、連用を避け作用性の異なる薬剤とのローテーション散布が望ましい。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属するフルチアニルのリスク換算係数は0.1で基準年のリスク換算量は0.013トンである。リスク換算量総量に与える影響度は極めて少ないこともあり、本剤は耐性菌対策に留意しながら、従来どおり使用する方が得策と考えられる。
(9)フルチアニルの農薬登録がある主要病原菌一覧
フルチアニルの農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。 実際の使用前には必ず製品のラベルにて登録内容(適用作物・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。
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