農薬:防除学習帖
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(87)無機化合物(求電子剤・硫黄)【防除学習帖】第326回2025年11月29日
令和3年5月に公表され、農業界に衝撃を与えた「みどりの食料システム戦略」。防除学習帖では、そこに示された減化学農薬に関するKPIをただ単にクリアするのではなく、できるだけ作物の収量・品質を落とさない防除を実現した上でKPIをクリアできる方法を探っており、そのことを実現するのにはIPM防除の活用が重要だ。そこで、防除学習帖では、IPM防除資材・技術をどのように活用すれば防除効果を落とさずに化学農薬のリスク換算量を減らすことができるのか探りたいと考えている。
IPM防除では、みどり戦略対策に限らず化学的防除法以外の防除法を偏りなく組み合わせ、必要な場面では化学的防除を使用して防除効果の最大化を狙うのが基本だ。その際、農薬のリスク換算量を減らせる有効成分や使用方法を選択できればみどり戦略対策にもなるので、本稿では現在、農薬の有効成分ごとにその作用点、特性、リスク係数、防除できる病害虫草等を整理し、より効率良く防除できてリスク換算量を減らすことができる道がないかを探っている。そのため、登録農薬の有効成分ごとに、その作用機構を分類し、RACコードの順番に整理を試みている。現在FRACコード表日本版(2023年8月)に基づいて整理し紹介しているが、整理の都合上、FRACコード表と項目の並びや内容の表記方法が若干異なることをご容赦願いたい。
39.無機化合物(求電子剤・硫黄)
(1)作用機構:[M]多作用点接触活性化合物
(2)作用点:多作用点接触活性
(3)グループ名:無機化合物(求電子剤・硫黄)/FRACコード[M2]
※JFRACのコード表では「無機化合物(求電子剤)」として銅と硫黄の2種があり、それぞれのFRACコードも異なる。これらを区別しやすくするため本稿では「無機化合物(求電子剤・硫黄)」と表記した。
(4)殺菌剤の耐性リスク:不明(ほとんど無いと考えられている)
(5)耐性菌の発生状況:無し
(6)化学グループ名/有効成分名(農薬名):
このグループには現在のところ1つの化学グループに2つの有効成分名、農薬名がある。
[1]:無機化合物(硫黄)/硫黄(イオウフロアブル、硫黄粒剤、硫黄粉剤など)
[2]:無機化合物(硫黄)/石灰硫黄合材(石灰硫黄合材)
(7)グループの特性:
このグループは、硫黄そのものが殺菌作用を持っており、病原菌に直接もしくは硫黄が還元されて生成する硫化水素の毒性によって病原菌の電子伝達系を阻害し殺菌効果を示す。硫黄は親油性で細胞内への透過性が強く、脂肪含量の多い病原菌に強く作用するといわれており、その殺菌作用は選択的で、うどんこ病やさび病など病害に高い効果を示す。
(8)リスク換算係数とリスク換算量削減の考え方:
この化学グループに属する硫黄および石灰硫黄合材のリスク換算係数は0.316であり、基準年のリスク換算出荷量は約217トンでリスク換算総量の0.9%にあたる。施設いちごなど、うどんこ病が問題となる作物を中心に使用されており、耐性菌の発生リスクも無く、散布回数の制限もない貴重な殺菌剤である。再評価制度によって優秀な保護殺菌剤が減る中、貴重な薬剤であるため、基本的には削減対象としない方がよいだろう。
(9)無機化合物(求電子剤・硫黄)の農薬登録がある主要病原菌一覧
無機化合物(求電子剤)の農薬登録がある主要作物・病害名・病原菌別有効成分の一覧を次表に示した。これらの他、他の殺菌剤との混合剤も存在するので、実際の使用前には必ず製品のラベルにて登録内容(適用作物・適用病害・使用方法等)を確認して正しく使用してほしい。


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