従業員の新型コロナウイルス感染 上場企業200社超に拡大 帝国データバンク2020年4月15日
帝国データバンクは4月14日、新型コロナウイルスに従業員が感染したことを公表した上場企業について行った調査結果を公表した。
調査によると、グループ会社や関連会社を含め、新型コロナウイルスに感染した従業員が判明した上場企業は、4月3日以降の10日間で約100社が新たに公表。13日までに累計210社に上り、感染により従業員が死亡したケースも発生した。国内で感染者が相次いだ2月以降、従業員を多く抱える国内上場企業にも影響が拡大している。
上場企業の従業員が新型コロナウイルスに感染したケースは、2月に初めて発生してから増加を続け、3月は90社超が公表。4月は従業員の感染を公表した企業が10社超に上った日が計4日間となった。
各社とも在宅勤務の導入やマスクの着用、アルコール消毒の徹底など、従業員の感染防止策を導入しているが、特に納期の厳しい建設や製造では感染者が大幅に増加、複数拠点で従業員が感染したケースも相次いだ。
また、対面接客せざるを得ない小売やサービスでも従業員の感染ケースが増加しており、感染防止にも業界特有の難しさが浮かび上がってきた。
写真=「新型コロナウイルス」感染者の発生 週別推移(上)、「新型コロナウイルス」感染者の発生 業種別 (クリックで拡大)
◆感染リスク高い小売・サービスで増加続く 急増の建設では業界全体が停止する可能性も
業種別に見ると、最も多かったのは「製造業」(70社)。全体の3割超を占め、直近10日間で2倍に増加した。
また、製造業では、自動車や機械、化学、食品など幅広い分野で感染者が相次ぎ、日産自動車といすゞ自動車は、自社拠点に勤務する従業員が感染。日本新薬は、社外取締役が感染したことを公表した。
次いで多かったのは「サービス」(38社)で、「運輸・通信」「卸売」(19社)、「小売」(18社)が続く。B to C業種となるサービスと小売で全体の2割超を占めている。
また、不特定多数の消費者との接触により感染リスクの高い小売では、ウエルシア薬局が千葉県内の店舗に勤務する従業員の感染を公表。同社によれば、当該従業員はマスクを着用し勤務していた。ドラッグストアやスーパーなどの小売店は、緊急事態宣言における休業要請の対象ではなく、社会インフラとして営業を続けている。
さらに、新型コロナウイルスに従業員が感染した場合、行動履歴の確認や濃厚接触者の特定のほか、各地域の保健所との連携、事業所の一時閉鎖・消毒作業の実施、さらには営業活動の停止にまで至るケースも多い。
従業員の感染公表が相次いだ建設では、業界全体が数か月にわたり停止する可能性が浮上している。
建設は15社で従業員の感染が発覚し、10日間で2.5倍に急増。作業員の感染が判明した清水建設は工事中止や現場の閉鎖を表明した。また、西松建設では緊急事態宣言の発令による工事中止などを表明している。
大手ゼネコンのこうした動きは、ジョイントベンチャーなどを組成する他ゼネコン各社にも影響する可能性があり、下請企業などに大きな影響を及ぼす恐れがある。
新型コロナウイルスの感染拡大に収束が見通せず、影響は長期化する兆しを見せている。帝国データバンクでは、感染による自社、他社への影響を最小限に抑えるためにも、各企業で感染症リスクに対する行動指針を見直し、適切な情報開示が急務であるとしている。
従業員の感染を公表した企業各社
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