長野県上高地における外来マス類の影響 在来イワナの捕食を確認2024年2月6日
筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所、長野県環境保全研究所、水産研究・教育機構水産技術研究所日光庁舎による研究グループは、長野県上高地に生息する外来マス類(ブラウントラウト、カワマス)と在来イワナの種間競合関係を調査。カワマスはイワナと食性および環境の生態的地位が重なること、ブラウントラウトはイワナを捕食することが確認され、これらの影響がイワナの減少につながっていると考えられる。
サケ科魚類は養殖・遊漁目的で世界の淡水域に広く移入されてきた。日本には19世紀末に、欧州原産のブラウントラウトや北米原産のカワマスが導入され、これらが日本のイワナの分布や生育環境に負の影響を与えていることが危惧されている。特に、長野県上高地では、大正~昭和初期に放流された外来マス類が優占する一方、イワナは過去数十年間で極端に減少したことが知られている。
同研究では、外来マス類(ブラウントラウト、カワマス)と在来イワナが混生する梓川上流域において、水中観察と消化管内容物を分析し、これら3種の種間の競合関係を明らかにした。2021年6月~9月に外来マス類(ブラウントラウト、カワマス)と在来イワナが混生する長野県上高地の梓川上流域において、水中観察と消化管内容物分析を行い、これら3種の種間関係を明らかにした(図1)。調査地は河童橋から明神池周辺の支流6本で、魚類291匹の環境利用と摂餌行動を水中観察で調べた(図2)。生息密度は外来マス類(ブラウントラウト:130匹、カワマス:141匹)が高く、イワナは低密度(20匹)だった。
3種の摂餌行動を分析したところ、摂餌頻度は同程度だったが、カワマスとイワナは底つつき、ブラウントラウトは中層摂餌が多い傾向があった(図3)。
また、消化管内容物の組成には魚種によって違いがあり、イワナとカワマスでは水生動物が主体で類似していたのに対し、ブラウントラウトでは陸生動物が主体で、前者2種とは異なった。さらに、大型のブラウントラウトからは、陸生昆虫に加え、両生類、魚類なども検出された。
これらの結果から、カワマスの餌は在来イワナと大きく重複すること、ブラウントラウトはイワナを直接捕食するほか、大型陸生動物の捕食を通じて渓流生態系全体に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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