定着するか賃金引上げ 2025春闘スタート 鍵は価格転嫁2025年1月23日
食品関連を含む個人消費に大きく影響する働き手の賃金を決める2025年春闘が始まった。「賃上げの定着」を通じた日本経済の好循環で労使トップの目線はそろうが、中小企業、地域経済への波及には適正な価格転嫁が鍵を握る。
労使トップが都内で会談
1月22日、労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長と経団連の十倉雅和会長が都内で対談し、25春闘が事実上スタートした。
芳野会長は「ようやく動き始めた賃金の流れを滞らせてはならない。新たなステージを定着させる年だ」とし、十倉会長も「今年は賃金引き上げの強いモメンタル(勢い)を定着する年にしなければ」と述べた。
連合の集計では、2024年の賃上げは全組合平均で5.1%と33年ぶりに5%を超えた。日本経済は長くデフレに沈んできたが、賃金が上がれば個人消費が伸び、企業の売り上げと利益も増え、さらに賃金が上がる好循環が期待される。
背景に深刻な人手不足
社会的な賃上げ機運の背景には人手不足もある。日銀短観(2024年12月)によると、雇用人員判断(「過剰」-「不足」、%ポイント)は大企業が-28、中堅企業が-36、中小企業が-40と企業規模が小さくなるほど不足感が強まり、先行きはさらに厳しくなるとみている。
2024年には、従業員の退職や採用難、人件費高騰などを理由とする人手不足倒産が累計で342件発生。2013年以降の過去最高を2年連続で更新した(帝国データバンク調べ)。企業は、賃金を上げないと人員が確保できず業務が回らないという事情に迫られているが、今年度の賃上げについて、全国の中小企業の25%は「賃上げしない」、26%は「未定」とする(日本商工会議所の調査)。
政府後押しも価格転嫁は道半ば
賃上げしたくてもできない中小企業が多いのは、賃上げ分を適正に価格転嫁できるとは限らないからだ。経団連も「中小企業における賃金引上げには、適正な価格転嫁と販売価格アップが不可欠」と認めるが、価格転嫁の求めに対する大企業の対応はさまざまで、十分な理解があるとは言い難い。労使トップ会談では連合・芳野会長が、「皆さまの力強いリーダーシップによって労務費を含む適切な価格転嫁を実現していただくようにお願いする」と経団連に求めた。
内閣官房と公正取引委員会も「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を公表し、賃上げ相当額の適切な価格転嫁を促しているが、同指針の認知度は約5割にとどまる。足元では、価格転嫁を交渉・達成できる企業とできない企業とに二極化し、後者の経営が厳しさを増す状況にある。
物価上昇を超えられるか
デフレから物価上昇へフェーズが変わる中、賃上げと価格転嫁が広がる経済状況は、農産物の合理的価格形成にも追い風といえる。賃上げが広がれば購買力が高まり、食品関連も含め個人消費の伸びにつながる。
物価上昇を超える賃上げで実質賃金が上がるか、そして賃上げ分の価格転嫁が円滑に進むかが鍵となる25春闘。その動向は、日本経済の将来に深く関わっている。
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