流通:食は医力
【シリーズ・食は医力】第58回 1合の酒は百薬の長2014年1月16日
・日本農業とともに生まれた日本酒
・砂糖より奥深い甘味料・味醂
・飲酒ゼロと毎日1合5勺の死亡率は同じ
お正月に飲みすぎてもうお酒の話はたくさんだという人には申し訳ありませんが、今回は日本酒と健康の話をしてみたいと思います。
そもそも熱燗でも常温でも冷酒でも、どんな温度でもおいしい酒は少ない。温冷どちらでも飲む酒はありますが、熱燗だ、ぬる燗だ、人肌で、いや冷だ、といちいちうるさい仲間同士で盛り上がるのは日本酒ならではでしょう。
◆日本農業とともに生まれた日本酒
その日本酒にはいろいろな種類があるので混乱しますが、純米酒は米と水から作られ、本醸造は醸造用アルコールが加えられたもの。ブドウ糖や酸味料などを加えた安価なのもありますが、個人的には純米酒をじっくり賞味するのが一番と思っています。
日本酒のうんちくを一つだけご披露すると、もともとは新米をもとに寒中の冷気や水を利用し、かつ農閑期を生かして一年分の酒をつくることを寒造りと呼んだのだそうです。
寒造り職人の長である杜氏(とじ)は、質の優れた酒を造る専門技術と、農閑期の合理的活用という二つの要素が重なって生まれたものでしょう。日本農業とともに長い年月を経て生まれたお酒だと考えると、軽々に飲んではバチが当たるというものです。
◆砂糖より奥深い甘味料・味醂
日本酒は調理用にも欠かせぬ存在で、煮物、汁もの、鍋物、つけ汁などに隠し味として、単独または味醂と合わせて使います。
ちなみに味醂は蒸したもち米を焼酎につけそれを米麹で分解させた日本が誇る調味料です(原産は中国らしいですが中華料理にはあまり使われません)。
なので、甘みなら砂糖という常識は今日限りにし、砂糖より高級で奥深い甘味料である味醂を活用して、ご自宅の調理人あるいは鍋奉行を務められてはいかがですか。株はぐんと上がるはずです。
閑話休題。お酒の話に戻りますが、私がなんと言っても好きな言葉は中国の王莽が言ったという「酒は百薬の長」です。酒は適量なら副交感神経を活発にさせてストレス発散も自在(のはず)です。実際、長寿の方々には、毎晩の晩酌を楽しんでいる人が多いではないですか。
問題はどのくらいが適量か、休肝日は必要か、です。専門家の意見を集約すると、日本酒で日に1合か1合少々(個人的には少々とは1勺か2勺かが大問題ですが)が適量のようです。
◆飲酒ゼロと毎日1合5勺の死亡率は同じ
さる新聞にこんな記事が載っていました。一日の平均飲酒量(アルコール量)が20グラムのとき病気や事故を含めた全死亡率が最低になるというのです(女性は10グラム、以下、男の場合の話で恐縮です)。
20グラムとは日本酒で1合、ビールで中びん一本見当ですから、この限りではほどほどが長寿の元というのはよくわかります。
ところが、死亡率のカーブはU字型をしているので、飲酒量ゼロの死亡率はU字型の底の20グラムより高くなる。つまりほどほどの酒は健康にとって望ましいということを示しています。
U字グラフは左右ほぼ対称なので、左側の飲酒ゼロのときと右側30?40グラムは、20グラムを対称に同じ死亡率なのです。ということは、全然飲まない人と日に30?40グラムの人とは同じ死亡率となります。
つまりは飲まずに死ぬ確率と、30グラム(つまり日本酒を毎日1合5勺)飲んで死ぬ確率が同じなので、さてどちらを選ぶかは、人さまざまということになる。これがお酒愛好家たる私の結論です。
ただし、ゆっくり飲む、楽しく飲む、良質の蛋白質を含む食べ物を食べる、澱粉類などカロリー過多を避ける、などに気をつけましょう。
あとは休肝日ですが、さる高名な内科医に尋ねたところ、「毎日1合、週に7合飲むのと、休肝日を週に二日つくって週に7合飲むのとでは、同じことですよ」と言っていました。もしそのとおりだとして、お酒大好きのあなた、どちらを選びますか。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日