重要病害に強いトマトを作出 農研機構2020年11月11日
農研機構は11月10日、灰色かび病など4種の重要病害に強いトマトを作出したと発表。今回導入したイネの病害抵抗性遺伝子BSR2(ビーエスアールツー)により病害に強くなる仕組みを解明し、さまざまな作物に対応可能な防除方法の開発を目指す。
灰色かび病抵抗性の実験結果
トマトは世界的に生産量が多く、国内の産出額は2367億円(出典:農林水産省統計部「平成30年 生産農業所得統計」)で、最も産出額の大きい野菜となっている。その一方で、灰色かび病をはじめとした病害による生産量の減少が国内外で問題になっている。
農研機構はこれまでに、理化学研究所環境資源科学研究センター、岡山県農林水産総合センター生物科学研究所との共同研究で、イネから糸状菌病の紋枯病に強くなるBSR2遺伝子を発見。また、イネに加え、実験植物のシロイヌナズナでもBSR2遺伝子を強く働かせることで、2種類の糸状菌病と1種類の細菌病に強くなることを報告している。
そこで今回、岡山県農林水産総合センター生物科学研究所と共同で、遺伝子組換え技術によりトマトの品種「マイクロトム」にBSR2遺伝子を導入し、植物全体で強く働かせることで、導入前のトマト(原品種)と比べ、灰色かび病と苗立枯病の2種類の糸状菌病に抵抗性を持つことを室内実験で見出した。さらにBSR2遺伝子を強く働かせたトマトは、青枯病と斑葉細菌病にも強くなることが分かった。なお、実験に使用した組換えトマトは原品種と比べ、植物体や果実の外観に大きな違いは認められなかった。
今後はBSR2遺伝子によってトマト等の植物が、複数の病害に強くなる仕組みを調べるとともに、BSR2タンパク質が生産する低分子化合物を同定し、灰色かび病等の重要病害に有効な新たな防除方法の開発を目指すことにしている。
また、これらの病害はトマト以外の多くの作物でも問題になっていることから、農研機構では「この化合物を利用することで、多くの作物で病害の発生抑制が可能になるだろう」と今後の研究に期待を寄せた。
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