鉄が欠乏する不良土壌でも育つオオムギの変異を解明 東京農大2021年2月1日
東京農業大学の樋口恭子教授らのグループは、鉄が欠乏する不良土壌でも育つオオムギの変異を解明。オオムギの品種の一部が鉄欠乏症に非常に強いことに着目し、世界中のオオムギ約20品種の鉄含量と光合成速度を解析、中央・西アジアなどのアルカリ土壌地帯で栽培されている品種では、少ない鉄を利用して効率よく光合成が行えるよう遺伝子が変異していることを突き止めた。

鉄は植物の光合成に不可欠な元素だが、アルカリ性の農地では水に溶けにくく、多くの植物が鉄欠乏症となり不作が問題となっていた。
鉄を吸収しにくい不良土壌での生育向上をめざす研究はこれまで、鉄を吸い上げる根の機能に注目して行われてきたが、今回の成果は光合成能力を増強する遺伝子の選抜・改変研究にも大きな可能性があることを示すもの。オオムギのほかコムギ、トウモロコシなど多くの作物で作付面積拡大や増産につながることが期待される。
今回、鉄欠乏症に強い品種が見つかったのは中央・西アジアや地中海沿岸、北米大陸中西部などのアルカリ土壌地帯。これらの農地でも比較的収量が多い品種を、農家や農業試験場が長年育種してきた結果、光合成に必要な遺伝子が変異した品種が選抜され残ってきたと考えられる。
同グループの解析によると、光化学系の反応中心に光のエネルギーを渡すLhcb1の遺伝子が、イネゲノムには3個しかないのにオオムギゲノムでは17個に増えており、この変異によって、鉄が足りずに壊れてしまう光化学系Iを守っていることが分かった。また、特に鉄欠乏症に強い品種では光化学系Iに鉄節約機構があることが判明。これにより、光合成の鉄欠乏耐性にはもっと多くの遺伝子が関与していると考えられる。
今後は、さらに変異遺伝子を探し出し、オオムギが厳しい環境でも育つ適応機構の全容を解明していく必要がある。そのため、今回の研究で有効性が確認された「光合成鉄利用効率(PIUE)」という新指標を活用。これは鉄1モル当たり何モルの二酸化炭素を有機物にできるか、という指標で、光化学系における鉄利用効率を数値化できたことで、QTL解析という分子遺伝学の手法を用いて未知の有用遺伝子を発見することも可能になる。
今回わかったオオムギ葉緑体の鉄欠乏への適応機構
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