AI活用による農地情報整備の共同研究を発表 リクルート×信州大学農学部2021年9月10日
リクルートの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボは、信州大学農学部と2020年12月から取り組む共同研究「水田活用における畦畔管理の効率化に関する取り組み」について、約半年間にわたる研究の成果と今後の見通しについて発表した。
畦畔(けいはん)は、水稲栽培に必要な水を田んぼにためる重要な役割を果たしており、大雨時の一時的な貯留などの役割も担っている。その畦畔を維持するため、漏水を防ぐための畔塗りなどの管理とともに、畦畔の崩落を防ぎ病虫害の発生を抑えるため、定期的な草刈りの作業が必要となる。一方、傾斜地の多い中山間地域の水田では、平地と比べて畦畔斜面の面積や角度が大きく、そこでの過大な労働負荷や管理コストの負担が課題となっている。また、畦畔斜面の傾斜角度を考慮した実質的な畦畔面積を測量することは多大な時間と費用を要するため、畦畔農地情報は整備されておらず、中山間地域の水田農業の経営改善が進まない一因となっている。
共同研究では、リクルートのAI技術と画像処理技術と、長野県林務部が作成した「航空写真×数値標高モデル」でAIモデルを作成する技術を確立。水田の畦畔面積・傾斜角、農地に占める畦畔の割合(畦畔率)を計測し可視化と、長野県全域の水田約5万ヘクターに対し、畦畔データ(GIS用座標付ポリゴンデータ)の作成に成功した。また、この研究結果は、農業工学分野やシステム農学分野の学術学会での報告と各学会誌への論文投稿を行う予定。
今後、畦畔データの作成技術はリクルートから信州大学農学部へ移転することによって研究を継続。信州大学農学部では、作成したデータをベースに水田1枚ごとの畦畔データを作成することで、農家が所有する水田ごとの畦畔の面積・傾斜角、畦畔率の計測を可能にする。また、予測モデルの精度を上げることで、長野県以外の地域でも、同様の結果を得られる高い汎用性を目標とする。さらに、水田の畦畔を含めた全国の農地のGISオープンデータの公開を通じて、県・市町村など地域行政と連携した「農地・畦畔見える化プロジェクト」の発展をめざす。
畦畔での草刈りの様子(赤い枠内が畦畔)
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