ナタデココとβ-グルカンで新食品素材を開発 食品粉末の新たな可能性 農研機構2021年10月5日
農研機構は、ナタデココとオオムギに含まれるβ-グルカンとを混合・破砕した新食品素材(ナタピューレ)を開発。農産物由来の粉末に新たな物性や加工特性を付与し、ペースト状食品の結着性や分散性を向上させるもので、同技術により、余剰・規格外農産物など未利用資源の適用範囲を3Dプリント食品などへ拡大し、フードロス削減に貢献する。
(A)市販のシロップ漬けナタデココ、(B)ナタデココを脱糖後にβ-グルカンの共存下で破砕して製造したナタピューレ、
(C)の試料を遠心分離して沈澱部として回収した3倍濃縮物
食品の乾燥・粉末化は、栄養を保持したまま、腐敗・変質を抑制して長期保存を可能にする。また、品質のバラツキをなくし、計量による加工再現性があるため、古くから、小麦、米、トウモロコシや芋類などで日々の調理に利用されてきた。最近では、フードロス削減のため、減耗率が高い野菜、果物などの余剰・規格外農産物を粉末化し、長期保存する取り組みが報告されているが、多くの場合、粉末化により農産物や食品が持っていた個性的食感がなくなるため、用途が限定されている。
農研機構では、農産物由来の粉末に、新たな食感などの特性を付与するための新素材「ナタピューレ」を開発。これまで、ナタデココとして知られるセルロースゲルを破砕するには、高価な破砕装置が必要とされてきたが、β-グルカンなどの水溶性多糖をナタデココと共存させることで、家庭用ミキサーでも簡単に破砕できる。また、精製されたβ-グルカンの代わりに、オオムギの抽出物を使うこともできる。
ナタピューレを構成するセルロースとβ-グルカンは、それぞれ、水不溶性および水溶性の食物繊維として日常的に食されており。これらを混合してナタピューレとして食品に添加することで、適度な繊維質感が得られる。ナタピューレは、主に2種類の相互作用により食品粉末の加工適性に影響する。1つは、ペースト調製時に粉末を結着させる作用で粉を硬くまとめやすくし、新たな形状・特性の成形食品を製造。3Dフードプリンタでの造形適性を向上したりするとともに、調理器具等への付着を抑制する。もう1つは、懸濁液中で澱粉のような水中で沈む粉体を安定に分散させる作用で、例えば、ゲル化剤粉末に高い分散性をもたせ、その懸濁物をシート状に配置して位置選択的にレーザー加熱することで、高度な食品デザインが可能となる。
今後は、様々な農産物粉末に対するナタピューレの添加効果を解明するとともに、調理・加工現場における普及に向けた取組を進められる。また、余剰・規格外農産物などの未利用資源や野菜加工時の副生物などの価値向上のため、ナタピューレの次世代型食品製造工程への適用可能性等を検討。おいしく健康に資する新食品提供とフードロス削減を実現する新産業の創出をめざす。
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