ベゴモウイルス抵抗性でトウガラシの生産量が倍増 ウイルス病被害の低減に期待 近畿大2022年8月31日
近畿大学大学院農学研究科博士前期課程2年のポハン ナディア シャフィラ氏(文部科学省国費留学生)と、小枝壮太准教授らの研究グループは、世界的に農作物の脅威となっているベゴモウイルスについて、ベゴモウイルス抵抗性遺伝子を持つトウガラシは、ベゴモウイルスによる病気の発病や進行が遅くなることから、果実生産量が倍増することを明らかにした。
トウガラシに見られるベゴモウイルス抵抗性の違い。
ベゴモウイルス抵抗性トウガラシBaPep-5はベゴモウイルス感受性トウガラシBaPep-4よりも
ベゴモウイルスによる病気の症状が軽い
現在、ベゴモウイルスには445の種類がある。トウガラシ、トマト、キュウリ、メロン、カボチャ、ズッキーニ、オクラ、マメ類など多くの農産物が、このウイルスに感染すると果実をほとんど収穫できなくなるなど、農業生産において世界的な脅威となっている。
ウイルスの感染は、タバココナジラミとよばれる昆虫に媒介されるため、生産現場では殺虫剤の散布で対策してきたが、過剰な殺虫剤の使用により、現在では殺虫剤が十分に効かないタバココナジラミが世界各地で発生している。1990年代には、トマトに黄化葉巻病を引き起こすベゴモウイルスが、イスラエルから日本、欧州、北米へ同時多発的に侵入し、生産農家を苦しめてきた。
世界的な研究の推進により、ようやくトマトのベゴモウイルス抵抗性遺伝子が特定され、ウイルス抵抗性品種の育種も進んでいる。また、同研究チームが、特に被害の大きい香辛料用品種やピーマン、パプリカ、シシトウなどを含むトウガラシ属の植物について研究し、2021年に世界で初めての抵抗性遺伝子を特定した。
同研究は、研究グループが発見したトウガラシのベゴモウイルス抵抗性遺伝子が、実際の生産現場で有用であるかを評価するために実施。ベゴモウイルス抵抗性遺伝子を持つトウガラシBaPep-5(Capsicum annuum)と、抵抗性遺伝子を持たないトウガラシをインドネシアで栽培し、3年間のほ場調査を行った。その結果、抵抗性遺伝子を持つトウガラシは、持たないものと比較して生産量が倍増することを明らかにした。
同研究成果から、トウガラシ生産におけるウイルス病の被害が大きく軽減できると期待される。今後は、この抵抗性遺伝子を用いて、より生産者、流通・販売者、消費者にとって魅力のある品種の育種を進める予定。
同研究に関する論文は、8月30日に園芸学分野の国際学術誌『The Horticulture Journal』のオンライン版に掲載された。
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