発育指数に基づき水田を水管理 自動化する技術を開発 IIJ2022年12月20日
インターネットイニシアティブは、稲作の水管理で、水田に設置したセンサーから取得したデータを元に稲の生育状況を算出し、算出した生育状況に応じて自動で水管理する仕組みを開発した。通常、栽培暦を参考に人手で行っている水管理を、稲の生育状況を指数化した「発育指数」(DVI)を用いて、自動で水管理できるようにしたもので、2021年から2022年に北海道美唄市で実証実験を行い、農作業の時間を大幅に短縮。また、従来と同様の収穫量を得られたことで、同技術の有効性が確認された。
システム概要
水稲栽培農家にとって水田の水管理は大きな労働負荷となっており、ICTを活用した水管理の効率化が推進されている。水管理は通常、栽培暦をもとに行われるが、圃場によって移植日(田植日)が異なったり、年によって気象条件が違ったりするため、人が各圃場に赴き生育状況を目視して対応する必要がある。同社は、ほ場毎に異なる条件でも対応できる水管理の自動化を目指し、気温や水温などの気象データを取得。そこから生育状況を算出したうえで、生育状況を時間軸とする水管理を考案した。生育状況を指数化したDVIを用いることで、気象条件や栽培期間のずれに影響されない定量的な水管理が可能となる。
今回開発した水田水管理自動化システムは、水田センサーや給水装置といった現場のIoT機器とクラウドシステムをネットワークで連携し、水管理プロセスを自動で実現する。具体的には、ほ場に設置したセンサーから、気温、水温等気象情報をクラウドシステムに送信し、クラウドシステムでDVIを算出。DVIの値に対応する適切な水位を決定し、この水位に合わせて給水装置を自動制御し、水位測定デバイスで監視する。
同実証実験は、美唄市営農者、美唄市ICT農業推進協議会と株式会社笑農和の協力を得て、美唄市の場で2021年6月から2022年8月まで実施した。検証は広さ2.0ha、1.2haの2つの圃場に、水田センサー(IIJ)、給水装置(笑農和)を各1台ずつ設置。移植日(5月中旬~下旬)から出穂期(7月下旬~8月上旬)の期間にDVIによる生育推定を行い、その中で幼穂形成期(6月中旬~下旬)から出穂期(7月下旬~8月上旬)の期間、同システムを使って自動水管理を行った。
栽培期間に低温になることが多い北海道では、熱帯植物の稲は気温によって収穫量・品質に影響を受けやすくなる。特に幼穂形成期から出穂期の間に幼穂が低温にさらされると生育不良が起きやすく、この期間深水管理が推奨されている。同実証実験では、この期間、夜間に水温が高いパイプラインから給水し、早朝前後に停止して圃場の水温を効率よく保つなどスケジュール機能も実装し、検証した。
2年間にわたる実証実験の結果、開発した仕組みを利用することで、気象条件が異なる年においても同水準の生育を行えることを確認。DVIに基づいて水管理を自動化する仕組みの有効性を証明した。
DVIを利用した水管理では、移植日の違いや地域の違いを意識することなく、栽培管理の比較・再現が可能になる。また、DVIの算出方式には、営農者が経験則で判断していた気象・気候要素が指数として取り込まれているため、気象条件にも影響されにくい安定した水管理が可能。水田の水管理を、リアルタイムでデータ取得・分析・制御を行うシステムを使い、DVIを用いたうえで自動化することで、作業負荷の大幅な軽減や栽培技術水準を維持できる。
同実証実験では主に北海道で行われている深水管理についての自動化を検証。作業時間の大幅軽減に加え、熟練営農者の水管理方法をIoT技術で可視化・定量化することで、収穫量の増加や品質向上に加えて、水管理技術の継承のサポートも期待される。
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