イチゴのジャストインタイム生産へ 収穫日の精密予測・制御技術を開発 農研機構2023年2月14日
農研機構は、作物生産におけるジャストインタイム生産の実現に向け、市場規模の大きな施設野菜の一つであるイチゴの収穫日を高精度に予測し制御する技術を開発し、人工気象室内で検証した。この新技術は、生産者が作物の需要動向を踏まえて収穫時期を正確かつ精密に調整し、計画的な出荷を可能とする次世代の農業生産の基盤になる。今後、人工気象室で得られた収穫時期調整技術をハウス等の生産現場で実証し、イチゴ農家の所得向上効果を検証する。
イチゴJIT生産システムの概要
イチゴは世界でも大きな市場規模があり、日本産イチゴは国内外で人気の作物。年間を通じて一定の需要があるが、販売方法や販売先によって需要の高まる時期は異なる。そのため、収穫時期を正確かつ精密に調整し、需要期に合わせられれば、生産・食品ロスの削減や、安定的なサプライチェーンの構築による持続可能な農業の推進につながる。
これまでイチゴの生産では、生育情報と天候・環境データを組み合わせて、出荷時期を予測する技術の開発が多く行われてきたが、得られた天候予報データを基に予測するため、収穫日が実際の天候に左右され、需要期に適切に対応した出荷の実現には問題があった。
開発した収穫日予測モデル
農研機構では、収穫時期を需要期に合わせることが可能な収穫時期調整システム「ジャストインタイム(JIT)生産システム」の開発を、センシング、予測モデル、制御技術を組み合わせたロボティクスの考え方に基づいて進めている。今回、高精度な収穫日の予測モデルを構築し、果実発育期間の制御により収穫ピークを目標日に対し誤差±1日で制御できることを、過去のハウス環境を再現した人工気象室での実験で確認した。このJIT生産システムを導入することで、これまでは天候により影響を受けていた出荷日を、生産者が市場の需要変動を見極め、目的とした出荷日に果実の収穫日を合わせることができるようになる。
イチゴJIT生産システムは現在、実際のハウスへの適用に向けて予測精度の検証中。2023年度以降はさらにその検証を進め、JIT生産システムを広く普及し、イチゴ生産安定化やイチゴ農家の所得向上への貢献を目指す。
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