マダガスカルで水稲施肥技術「リン浸漬処理」普及拡大 国際農研2023年4月10日
国際農研が、マダガスカル国立農村開発応用研究センター(FOFIFA)と共同開発した水稲施肥技術「リン浸漬処理」(P-dipping)によるコメの増収効果が、同国の広域で確認されており、民間の肥料会社への新たな投資が創出されるなど、社会実装が進んでいる。
P-dipping少量のリン肥料を混ぜた泥を苗の根に付着させてからイネを移植する簡易手法
国際農研は、国際協力機構(JICA)が実施する技術協力プロジェクト「コメセクター生産性向上及び産業化促進支援プロジェクト」の協力を得て、マダガスカル農業畜産省普及局と現地の民間肥料会社と、P-dippingの簡易マニュアルと少量の肥料(3kgの重過リン酸石灰を梱包)を入れた袋を作成。マダガスカル国内の農家3000戸以上にP-dippingの広域実証試験を行った結果、ヘクタールあたりのコメ平均収量が3.7トンから4.8トンと約1.1トン(30%)増加した。
P-dippingの実践圃場。左半分のP-dippingが施された区画は、イネの生産性が高く、登熟が早い
コメの増収は、稲作を主な収入源とする同国の農村地域の貧困農家に大きな経済効果をもたらす。2022年10月からは、P-dipping用の肥料(重過リン酸石灰)の販売が始まり、今年2月までに1000戸以上の農家が購入している。
肥料価格が高騰するなか、農家は同技術を継続的に活用。購入者に対する追跡調査から、P-dippingは施肥量が少ないだけでなく、肥料の持ち運びも容易であることから、経済的な理由や肥料市場へのアクセスの悪さの影響で、水稲への化学肥料の施用が難しかった貧困農家にも導入されていることが分かった。
P-dipping用の少量肥料袋を購入し、買い物籠で持ち帰る農家
農家の技術の普及状況を受け、マダガスカルの民間肥料会社が、P-dipping用のリン肥料50トン(約900万円相当)を追加で海外から調達するなど、新たな民間投資も生まれた。
国際農研は、マダガスカルでの3年間の家計調査をもとに、コメの増収が農家の所得や栄養摂取量にも正の効果をもたらすことを明らかにしている。開発したP-dippingが、より多くの農家や肥料会社に知られ普及することで、マダガスカルのコメの増産と農家の貧困削減と栄養改善につながると期待される。
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