植物におけるトリテルペノイド 生物学的、生理学的役割を明らかに 農研機構2023年6月6日
名古屋大学大学院生命農学研究科の髙橋宏和准教授らの研究グループは、大阪大学大学院工学研究科の關光准教授、村中俊哉教授、農研機構の島村聡上級研究員らとの共同研究で、ダイズの二次通気組織におけるトリテルペノイドの生物学的、生理学的機能を新たに発見した。
図1. ダイズが形成する二次通気組織とその機能
(a)ダイズを栽培したポットごと水に沈め、
2週間ほどたつと水中にある胚軸や根に白いスポンジ状の二次通気組織(青矢印)が形成される。
(b)二次通気組織は水面の少し上まで形成されることから、そこから酸素を取り込んで、根へと輸送する。
酸素の輸送のイメージは赤矢印。
日本においてダイズは、重要な畑作物だが、その8割以上が元々水田として使われていた水田転換畑で栽培されている。水田転換畑は、水はけが悪いため雨が降ると水が溜まりやすく、その影響で作物の根は酸素不足に陥り、生育障害が生じることを「湿害」と呼ぶ。
ダイズは6~7月に播種するため、幼苗期が梅雨の時期と重なり、湿害の発生が大きな問題となる。ダイズの耐湿性の向上は重要な育種目標となっていたが、ダイズは土が水浸しになってしまう「過湿ストレス」に対して、全く適応機構をもっていないわけではない。
ダイズは、過湿ストレスにさらされると、胚軸や根に白いスポンジ状の「二次通気組織」と呼ばれる組織を形成(図1a)。この組織は、水面の少し上まで形成されることから、水没した根に酸素を供給するための酸素の取り込み口と酸素の輸送経路として重要な役割を果たす(図1b)。しかし、これまでにこの二次通気組織に関する分子生物学的な知見はほとんどなく、二次通気組織がどのように酸素輸送に貢献しているかは不明なままだった。そこで同研究では、二次通気組織ではいったいどのようなことが起こっているのかを明らかにすることに取り組んだ。
同研究では、土壌が水浸しになってしまうストレス環境で、ダイズがその形成を誘導する白いスポンジ状の二次通気組織に、ルペオールやベツリン酸といったトリテルペノイドが高蓄積していることを発見。この二次通気組織は、水中での酸素輸送に重要で、植物がその一部を水に水没させても、二次通気組織を通して根に酸素を運搬することができる。
同研究では、トリテルペノイドが二次通気組織の撥水性に寄与し、効率的な酸素輸送を介して、過湿ストレスへの適応に重要であることを明らかにした。これまで植物においてその機能が不明であったトリテルペノイドが環境ストレス耐性に重要な役割を果たす可能性を新たに示唆している。
同研究成果は、6月5日付国際科学雑誌『New Phytologist』に掲載された。
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