天敵昆虫導入による防除効果が約40年持続 伝統的生物的防除の持続事例を解明 農研機構2024年5月16日
中国から導入し、1982年に放飼した天敵寄生蜂「チュウゴクオナガコバチ」が、クリの侵入害虫クリタマバチによる被害を導入から40年余りも抑制し続けていることが、農研機構による長期定点調査データの解析から明らかになった。化学農薬や耐虫性品種の育成では対応しきれなかった害虫被害に対し、天敵寄生蜂の1回の放飼が極めて効果的な防除法として機能していたことを科学的に解明。クリの安定的生産のための伝統的生物的防除の持続的な有効性を世界で初めて示した。
虫と虫こぶの写真。
A:クリタマバチ成虫。初夏にクリの新芽(休眠芽)に産卵する。
B:クリタマバチにより形成された虫こぶ(矢印)。ふ化幼虫の生育が急速に進む翌春に虫こぶができる。
C:チュウゴクオナガコバチ成虫。
虫こぶを見つけて内部にいるクリタマバチ幼虫体表に産卵し(外部寄生)、ふ化した幼虫が食い殺す。
海外からの侵入害虫は、多くの場合、侵入先には自身の天敵がいないため、個体数が急速に増加しやすく、その結果、餌となる作物に大きな被害を及ぼす。そこで侵入害虫を永続的に防除することを目的として、害虫の原産地から有力な天敵昆虫を導入・放飼する防除法があり、「伝統的生物的防除」と呼ばれている。
農研機構は、中国大陸から侵入したと考えられているクリの難防除害虫・クリタマバチの伝統的生物的防除を目的として、中国から導入した天敵寄生蜂チュウゴクオナガコバチの最初の本格的放飼を1982年に農研機構敷地内(茨城県つくば市)で実施。以来その放飼地点における当該害虫と天敵の動態調査を2023年まで継続してきた。
今回、長期的な防除効果を判定するため、放飼後40年間におよぶ調査データを解析した結果、害虫密度が一時的に高まってもそれに連動して天敵が寄生・増殖することで速やかに害虫密度が低下し、被害が長期間低く抑えられていたことが明らかとなった。
チュウゴクオナガコバチは1982年以降、日本各地で国や県の事業として順次放飼され、近年ではクリタマバチの被害は問題視されなくなっている。同成果は、害虫と天敵の連動した動態を長期間調査することで、天敵による被害抑制効果の持続性を科学的に明らかにした、世界でも研究事例の少ない報告。一度定着すれば導入天敵により長期間にわたり害虫が抑制され、化学農薬だけでは防除が困難だった害虫種に対し、伝統的生物的防除により、被害を心配することなくクリが生産できていることが示された。
同成果は、2023年10月28日にSpringerおよび日本応用動物昆虫学会が発行する国際学術誌『Applied Entomology and Zoology』にオンライン掲載された。
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