ビール大麦試験圃場へバイオ炭施用 GHG排出量削減と生産性向上の両立を確認 キリン2026年3月23日
キリンホールディングスの飲料未来研究所は、2024年10月に開始した、栃木県農業総合研究センターと早稲田大学との共同研究において、ビール大麦試験圃場へバイオ炭を施用することで、GHG排出量が削減されることに加え、収量向上、保水性改善、土壌硬度低下、養分利用効率向上などの生産性向上を確認した。同研究成果は、3月12日に開かれた日本農芸化学会2026年度大会(同志社大学)で発表された。
栃木県農業総合研究センターのビール大麦試験圃場
ビール大麦を含む農作物の栽培に伴い排出されるGHGは、地球温暖化の一因とされており、農業分野においても排出量削減に向けた技術開発が求められている。近年は、炭素貯留効果を有するバイオ炭、土壌改良と脱炭素を同時に実現する技術として注目されている。
同社は、原料生産段階からのGHG排出量削減を重要な課題と位置づけ、栃木県農業総合研究センターおよび早稲田大学と連携し、ビール大麦栽培におけるバイオ炭施用の科学的検証に取り組んできた。
同研究では、もみ殻由来のバイオ炭をビール大麦試験圃場へ施用した際の影響を、物理的・化学的・生物学的観点から総合的に評価。その結果、炭素固定(大気中や排気ガスなどに含まれている二酸化炭素(CO2)を固定すること)、土壌改良、特定の微生物(細菌・真菌)が増加するなど土壌中の微生物のバランスが変化し、養分循環や植物生育を支える働きが高まるなどの生産性向上の可能性が示唆。これにより、持続可能な環境再生型農業とGHG排出量削減を両立する技術としての有効性が確認された。
栃木県農業総合研究センターのバイオ炭(もみ殻くん炭)
■研究概要と主な成果
同研究では、もみ殻由来バイオ炭を100~500kg/10aの条件でビール大麦試験圃場へ施用し、以下の評価を行った。
①物理的・化学的効果および収量評価
・炭素固定量は約0.1~0.5t-CO2/10aと推定され、バイオ炭施用による炭素固定を通じて、ビール大麦栽培に伴うGHG排出量の削減に寄与することが示唆された。
・土壌中の全炭素量が増加し、可給態リン酸および交換性カリウムの増加を確認した。
・有効水分の増加や土壌硬度低下傾向が見られ、透水性・物理性改善効果が示唆された。
・収量面では、整粒重 3~11%の増加傾向を確認した。
②生物学的効果の評価
・バイオ炭施用により、特定の細菌および真菌の相対存在量が増加した。
・これらの特定の細菌および真菌は、植物生育促進、養分吸収効率向上、窒素循環やリン可溶化促進に関与することが知られており、土壌生態系機能の強化や持続的な土壌肥沃度改善への寄与が示唆された。
③麦芽品質・醸造品質の評価
・収穫したビール大麦をマイクロ製麦装置で製麦後、麦芽品質・醸造品質を確認し、有意差のある差異は見られなかった。
上記①~③の結果から、バイオ炭施用は、土壌改良・生産性向上・炭素貯留を同時に実現しうる環境再生型農業技術であることが示された。
同研究成果は、ビール大麦栽培におけるGHG排出量削減技術の実用化に向けた重要な知見となる。同社は今後、農地や他作物への展開を視野に入れた検討を進める。また、産学官連携を通じて、原料生産から製品までのバリューチェーン全体でのGHG排出量削減に貢献し、持続可能な社会の実現を目指す。
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