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栽培技術:現場の課題解決へ 注目のパートナー

【課題解決へ 注目のパートナー③】データ「使える化」で産地形成 テラスマイル「Right ARM」2023年11月2日

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データを活用した農業経営が求められている。気温や日射量、降水量などの気象データや、苗の定植日、開花日など作物の生育データ、さらには土壌分析データなど、さまざまデータが思い浮かぶが、では、それをどう農業経営に生かすのか。シリーズ3回めでレポートするのは、ばらばらなデータを集約しワンストップで「見える化」して農業者やJAの営農指導員に情報提供するツールを開発し産地を支援している「テラスマイル」(本社・宮崎市)。宮崎県のピーマン生産者たちを訪ねた。

仲間と研鑽 強い産地に

ピーマン生産者の橋口仁一さんとテラスマイルの中園英太郎さんピーマン生産者の橋口仁一さんとテラスマイルの中園英太郎さん

宮崎県西都市の橋口仁一さんは同県のリーダー的なピーマン生産者で親元就農して以来、栽培技術の高度化と規模拡大で経営を発展させてきた。現在の経営規模はハウス栽培で100a。この3年で3倍になったという。10月から翌年の6月まで出荷するピーマンのほか、ゴーヤーとスイートコーンも栽培している。

橋口さんは夏に3人を雇用、冬にはさらに4人増やす。地域の雇用にも貢献する家族経営として発展させてきた原動力は,明確な将来ビジョンと仲間との農業技術の研鑽にある。

「家族を持ち子どもの将来を考えれば、どのくらいの収益が必要になるか目標を決めた。自分で自分のターニングポイントを作らなければと思いました」と橋口さん。

自分のビジョンを実現するためにも、仲間との勉強会が必要だと10年前に自主学習団体を立ち上げた。「自分の経営は自分の技術がすべて。しかし、そのために失敗も成功も隠さずシェアし、競い合って高い技術を身に着けられる仲間が必要だと考えました」

橋口仁一さん橋口仁一さん

その仲間との研鑽に必要なのが「競い合いのためのデータ」なのだという。

一方、テラスマイルは2014年に宮崎県で創業し、橋口さんは16年から自分たちの研究会に同社が開発した「RightARM(ライトアーム)」という農業情報基盤を導入した。

「RightARM」は、生産者自ら入力する定植や施肥、農薬散布、開花などの栽培管理データのほか、気象データ、ハウス内に設置したセンサーによる環境モニタリングデータなどのデータを集約、整理するツールだ。データには卸売市場の市況動向や雇用者の作業効率を示すなど労務管理にも役立つデータもそろえられている。

橋口さんたちの勉強会では、メンバーが入力した栽培管理データに加えそのシーズンの気象動向とハウス内の環境データ、そして収穫量などを同社スタッフがグラフなどで示す。それをもとに肥培管理の課題などを分析して収量と品質向上につなげてきた。

とくに市況データの活用は今までにない視点だった。どの時期に出荷すれば収益が上がるかを検討、その結果、出荷の少ない厳寒期の2月に出荷できれば市場評価も高まるということも分かり、そこから逆算して定植日や肥培管理法などを検討していった。

厳寒期の出荷に向けてCO2の発生装置も導入するなど新たな技術も確立した。当初は10a当たり平均で11~12tの出荷量だったが、今ではグループ全体の平均が16tを超えているという。

知って変化栽培管理法

松浦一徳さん松浦一徳さん

こうした橋口さんの取り組みは他地域にも広がっている。西都市黒生野地域で「RightARM」を使った勉強会に参加している松浦一徳さんもその一人だ。

両親とパートも含めて6人でピーマンを60a栽培している。

猛暑や大雨など気候変動が激しくなると同時に生産資材価格が高騰、松浦さんは「経費の削減は難しい。そうなると収入を上げるには収量をどれだけ上げるかがますます大事になる」と話す。

勉強会は月1回。データを活用することで大きく変わったのが、栽培管理法だ。それまではハウス内の温度を午前中からピーク近くまで加温し午後に下げていたが、データ分析を続けるなかで午前中から加温するものの徐々に気温を上げて、午後1時ごろにピークに持っていき、その後、下げる栽培管理法に切り換えた。散水量は日射量に応じて決めている。

それによって収量が上がったが、以前の方法では日射量が少ないうちに気温だけ上昇させたため光合成が十分に行えず、木を疲弊させていたのではないかと考えられた。橋口さんは「データからどう生育をイメージできるかが大事」と話し、作物にダメージを与えるような管理になっていないか、あるいは無駄な作業を行っていないかを見出していくことが重要だという。

そのほか今後の気象予測データも示されるため松浦さんは「1カ月後を見越して追肥を行い、今までは発生してから行っていた防除も、早めに予防的散布するなどで病害虫の発生自体も少なくなりました」と話す。病害虫の発生が少なくなれば、農薬使用量も少なくて済む。

仲間との勉強会ではハウス巡回も行う。普通は病害虫などが発生しているハウスをあまり人に見せたくはないものだというが、対処方法などについて仲間がいろいろな意見を聞かせてくれる。

「一人で考えるよりいい。1年でたとえばメンバー10人のハウスを見て回れば10年分の栽培を経験することになると思っています」と評価する。

勉強会に参加する前は10a当たり13t程度だった出荷量が現在では16~17tに増えたという。出荷先は「自分で作ったものは自分で売りたい」との考えで卸業者を通じて特定の販売先に売る。評価が直接聞けることも励みになる。

松浦さんは「これだけ気候が変わってくると、今までどおりの栽培法では通用しない。データに基づかない農業では、穫れるものも穫れなくなると考えています」と話している。

気候に応じ定植期変更

松浦さんが指摘するように、その年の気候予測にどう対応して栽培するかも現場では大きな課題となっている。「RightARM」では過去の気候データを参照することもできる。

それを活用して、今年、今までにない栽培体系に取り組んでいるのが橋口さんだ。

ピーマンの栽培は7月から8月にかけて定植するための床づくりを行い、9月に定植する。しかし、橋口さんは今年は8月上旬に定植した。9月にはすでに1回目の出荷を終えた。

橋口さんによると今年の気象予測からこの冬の高温傾向を見越し、似たような過去のシーズンの出荷量などを分析、それによって「木が弱らないよう体力が付き丈夫になる作り方」が必要だと定植を早めたのだという。取材に訪れた9月中旬、他のハウスではまだ定植したばかりの風景だったが、橋口さんのハウス内ではすでに大きく育っていた。気候変化に対応してどう栽培を考えるか、定植時期を変えるという新たなチャレンジもデータの活用があればこそである。橋口さんは仲間とピーマンのブランド化を図り、輸出も視野に入れた農業へ地域のリーダー的存在として産地を引っ張っている。

コンセプト産地の成長

平田祐貴さん(右)と中園英太郎さん平田祐貴さん(右)と中園英太郎さん

「RightARM」はさまざまなデータを集約化して使いやすくした農業情報基盤であり、これによって情報を一元管理し、さらに分析方法も提供することで営農を支援していこうというツールだ。

JAでも生産部会などに提供するデータをとってはいるものの、それを資料のかたちに作成するには時間と労力がかかり、あるいは収集したデータをどう使えばいいか分からないといった課題もある。

それらデータの整理と資料作成の手間を省くとともに、経験豊富な営農指導員が蓄積していたデータを組織として活用するといった営農指導の高位平準化を図るためのツールでもある。

栽培データは生産者がパソコンで入力する必要があるが、気象データや市場データなどは関係機関との連携でデータを活用している。

集約されたデータは生産者ごとに「ほ場カルテ」として示されるほか、ほ場ごとの開花から収穫までの日数、日射量、積算温度の推移や、ハウス内の温度と出荷量の関係を示すグラフ、市場の出荷動向など15ほどの分析画面として示される。また、JAの営農指導員や行政担当者など生産者をサポートする人には生産者の取り組み全体を把握できる管理者画面が提示される。

同社はこの「RightARM」の提供先に対して原則8か月間を伴走期間とし、その間に5回のワークショップを行う。たとえばJAの生産部会に対し、そこが求めるデータを提供し、単収増などの目標を設定、目標実現のために施肥が鍵を握るなどの仮説を立て、それをデータで検証していくということになる。

仮に、は種から収穫までのスケジュールは統一し作業のばらつきはなくしたものの、ほ場によって収量増の程度にばらつきが見られたときには、同期間の降水量など外的要因に差が見られるかどうかを検証するといった取り組みで目標実現に向かっていくことになる。現在、25都道府県30産地が「RightARM」を活用しており、2025年までに全県での導入を目標にしている。

行政やJA単位で基本料金110万円から導入でき、産地の要望に応じてデータ取得項目、取得方法、出力データのカスタマイズが柔軟にできることが特徴である。また、農業法人や生産者グループでの導入も広がっている。

今後は、さまざまな営農管理システムや作業ロボットを提供している企業などと連携しデータ駆動型農業の実装を各地で図るほか、消費地のニーズも反映した生産から流通までの農産物トレーサビリティシステム、卸売市場ニーズの産地への伝達、デジタル人材の育成と営農マニュアルの作成もめざす。

同社事業統括ディレクターの平田祐貴氏は「自分の目標を立てデータで分析し実践する繰り返しのなかで、今度は隣の農家を目標にしてそれを超えていこうと多くの生産者が考えるようになっています。産地のボトムアップにつながり、マニュアル化すれば新規就農者の獲得ツールにもなると考えています」と話す。

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