世界最高峰の晩抽性 ハクサイ新品種「いとさい1号」を育成 岩手大など2022年6月23日
岩手大学、サカタのタネ、農研機構、岩手県の4者は共同研究で、世界最高峰の晩抽性を持つハクサイの新品種「いとさい1号」を育成した。新品種は、生産コストや環境負荷を低らし、安定生産を実現する。
ハクサイなどアブラナ科の葉根菜類を早春にタネ播きすると、葉を作る生長点が低温によって花を作るように変化し、花茎が急速に伸びて開花するようになる。これは、抽だい(とう立ち)と呼ばれる現象で、栄養分が花茎に奪われて葉の生育が不十分となり結球が進まず、場合によっては収穫できなくなる。抽だいを防ぐには、タネ播き後、しばらく加温(暖房)して苗を育てたり、畑でビニールトンネル被覆をしたりして、低温に遭遇させない栽培が行われている。早春~春播きのハクサイ作型において、エネルギー投入を不要にして栽培コストと環境負荷を低減させながら、安定した収穫が得られるよう、抽だいしにくい晩抽性品種の育成が求められてきた。
晩抽性品種の開発は、1983年に当時の農水省野菜試験場(三重)で始まり、2005年からは、農研機構、岩手大学、株式会社サカタのタネ、岩手県の4者による共同研究が続けられてきた。その間、在来品種の「大阪白菜晩生」の中に特異な晩抽性を見出し、利用開発を進め、2021年に世界最高峰の晩抽性を持つハクサイ品種の育成に至った。
今後は、岩手大学滝沢農場の他、共同育成者である岩手県の農業研究センター(北上市)と県北農業研究所(軽米町)など試作を増やしながら「いとさい1号」の商品性について確認を進め、種子の販売を検討。共同研究では、さらに「いとさい1号」を上回る晩抽性品種の実用化をめざして、研究を進める。
2020年3月にタネ播きした「いとさい1号」(左)、2020年3月に播いた既存の晩抽性ハクサイ品種
◎育成した新品種の特徴
<晩抽性>
2020年3月にタネ播きした「いとさい1号」(写真1)と、同じ日に播いた既存の晩抽性ハクサイ品種(写真2)。このタネ播き時期では、生育初期から低温に遭遇するため、既存の晩抽性ハクサイ品種であっても抽だいが進むため、写真2のように花茎が20センチ以上に伸長して結球が乱れ、商品になるハクサイを収穫できない。一方、「いとさい1号」(写真1)の花茎は5センチほどしか伸びておらず、きれいに結球したハクサイを収穫できる。
<葉の品質>
「いとさい1号」は、サカタのタネから市販されているハクサイ品種「タイニーシュシュ」に晩抽性を持たせた新品種。「タイニーシュシュ」と同様に葉の表面に毛が生えない特性をもっており、生食にも適している。
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