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特集:元気な国内農業をつくるためにいま全農は

2013.10.10 
【営農販売企画部】中澤靖彦部長に聞く 消費者・実需者ニーズに応える仕組みを構築一覧へ

・パイロットJAは日本農業の典型
・低コスト生産で業務加工用需要に応える
・アンジェレに続くオリジナル品種を探索
・輸出も含め販売力を強化していく
・TAC活動をステップアップし地域営農を振興

 営農販売企画部(営販企部)の役割は、消費者・実需者ニーズにマッチした生産物を低コストで生産する仕組みを構築し、これを生産現場と販売現場の両方に提案・普及し、国産農畜産物の販売力を強化してことにある。その多くの課題のなかから重点課題について中澤靖彦部長に聞いた。

生産者と一緒に
継続した農業経営を築く

JA全農営農販売企画部・中澤靖彦部長 営農販売企画部(営販企部)の重点具体策は、全農の3か年計画(平成25年?27年度)の3つの重点課題である「元気な産地づくりと地域のくらしへの貢献」「国産農畜産物の販売力強化」「海外事業の積極的な展開」のすべてと密接に関係していると、中澤部長。
 そして、生産場面では元気な産地づくりを実現することをめざして、「大規模営農モデルの構築」、「業務・加工用野菜と業務用米の産地づくり」、「特長野菜の開発・導入」の3つの課題に取組んでいる。
 一つ目の大規模営農モデルの構築は、「地域営農ビジョン実践のため、集積された農地を担う担い手生産者の手取りが最大となるような営農モデルをつくろう」というもの。そのために「販売戦略に基づいて作付品目を選定し、全農が蓄積した省力・低コスト技術を投入して、営農計画策定支援シミュレーションソフト『Z?BFM』(全農と農研機構の共同開発)によって最適なモデルをつくり、実証と検証を経て、そのモデルを水平展開していく」。
 「基本は個々のJAで取組んでいただきたいのですが、まず、全農として全国に6つのパイロットJAを設置して、自ら取組んでいる」。
 6つのパイロットJAは別表の通りだが、生産者(社)の経営状況を、家族労働費まで加算して分析。それに基づいて、販売先と結びついた新しい作物の導入を提案し「一緒に作り上げていく」ことで収益を向上させ「継続した農家経営を可能にしていく」ことをめざしている。

(写真)
JA全農営農販売企画部・中澤靖彦部長

◆パイロットJAは日本農業の典型

 6つのパイロットJAはそれぞれ異なった特徴があり、それは日本の農業の典型ともいえる。
 茨城県のJAやさとのやさと菜苑(株)は、ネギ専作の園芸生産者。ここは「夏の水枯れによって収量が低い」ので、太陽光エネルギーを使い水をポンプで汲み上げる「自動潅水装置」を導入することを提案。合わせてネギの収穫機も導入して省力化することで生まれた余剰労働力を活かして他の作物を導入することを提案している。
 千葉県の(株)援農いんばの詳細は3面の現地ルポを参照。
 神奈川県のJA湘南の家族経営生産者は、都市近郊農業の典型。現在、ハウスと露地のコマツナを生産し、近くのJA全農青果センター神奈川センターに納入しているが、出荷するための包装を神奈川センターに委託することで省力化し、その余剰時間を規模拡大・コマツナ新品種導入へという提案をしている。この地域には同じような形態の生産者がいるので「成功させて水平展開したい」と中澤部長。
 新潟県のJA越後中央の(有)鏡潟は典型的な平場・稲作経営だ。経営的には問題はないが、ほ場が点在しているため管理が大変だ。そこで、富士通の食・農クラウド「Akisai(秋彩)」を導入し、ICTクラウドで農業経営の効率化をはかる。また、大豆や園芸栽培にとっては排水が悪いので、地下水位制御システム「FOEAS(フォアス)」の導入を提案している。
 さらに経営を安定させるために加工・業務用野菜の規模拡大をはかっていく。規模拡大にあたっては、水稲の育苗施設が育苗後は遊休施設となっているので、この施設を活かして設置も撤去も簡単なトロ箱養液栽培システム「うぃずOne」による野菜生産を提案。
 広島県のJA広島北部の農事組合法人きつぎは、典型的な中山間地の集落営農だ。ここでは、園芸作物のキャベツについて契約栽培などによる販売力強化をはかるとともに、水稲については「鉄コーティング」による直播栽培など、省力化をはかっていく。
 全国で大問題となっている「鳥獣害対策」についても取組む。「いますぐにという解決策はないが、新しい技術について情報提供していく」。
 最後に宮城県では、「震災復興支援」をテーマに、現在、JAや生産者と具体的な取組みを検討している。

パイロットJAの取り組み状況

◆低コスト生産で業務・加工用需要に応える

 二つ目は「業務・加工用野菜と業務用米の産地づくり」だ。
 現在、野菜の全流通量1500万t/年のうち60%が加工・業務用でそのうちの約30%、約300万tが輸入だ。これは「金額にすると約3800億円のマーケット」になる。主な品目は生鮮品では、タマネギ、ブロッコリー、ネギ、ニンジン、カボチャだが、これを「国産品に置き換えたい」と考えている。
 パイロットJAでも加工・業務用野菜に取り組み、所得向上をはかっていくが、そこで蓄積された経験や技術を地域に水平展開していくことも大事だ考えている。そのために、全農では園芸総合対策部を中心に加工・業務用野菜産地づくりに本格的に取組んでいるが、営販企部は省力・低コスト技術の導入を担当している。
 米についても、現在、流通量約790万tのうち40%以上が業務用で、実需者は食味はそこそこでも価格の安い米を求めているが、産地では銘柄米の生産が中心で、需給にミスマッチが起きている。
 全農としては「コシヒカリに比べて価格は安くても収量でその分をカバーできる多収品種を導入し、その育成に取組むとともに、鉄コーティング直播などの低コスト技術を駆使して生産者の手取りを確保できる仕組みを作って」いく。
 現在、コシヒカリの平均単収は520kg程度だ。農研機構が開発した多収品種「あきだわら」は700kgを上回るが、さらに800?1000kg収穫できる品種を探索していくつもりだ。「その延長線上に輸出米の産地づくりも見据えている」と中澤部長は語る。

◆アンジェレに続くオリジナル品種を探索

全農オリジナルトマト「アンジェレ」 「元気な産地づくり…」の三つ目は「特長野菜の開発・導入」。その代表例はミニトマトの「アンジェレ」だ。平成23年度から全農オリジナル品種として本格販売をはじめ、24年度は全国4.4haで作付し1.3億円を売り上げた。
 “へた”のないプラム型でリコピン含有量が多いことを活かした「おやつ、おつまみ、美ベジ」という新しいコンセプトが受け入れられ、「首都圏、阪神圏の中堅スーパーや生協の共同購入の定番商品となり、消費者から好評」を得ている。25年度は12ha、26年度は20haと作付面積を拡大し「10億円商品をめざしていく」という。
 さらにこれに続く全農オリジナル品種も検討中なので「期待して欲しい」と中澤部長。

(写真)
全農オリジナルトマト「アンジェレ」

◆輸出も含め販売力を強化していく

 中澤部長は「元気な産地をつくるために、販売力強化の取組みをさらに進化」させていく決意だ。
 24年度の全農グループ直販6社(東・西パールライス、JA全農青果センター、JA全農ミートフーズ、全農チキンフーズ、JA全農たまご)の売上高は6013億円(前年比103%)。これを27年度には7000億円にする計画だ。
 そのために主要取引先に、トップ商談や全農フェアによるクロスMDなどを仕掛けていく。そして来年の3月12?13日には東京国際フォーラムで「第8回国産農畜産物商談会」を開催し、実需者にJAグループの商品を「強力にアピール」する。
 販売面でのもう一つのターゲットが輸出だ。中澤部長は「TPPに参加しても、日本の農畜産物は高品質なので輸出に活路を見出せば大丈夫という“安易”な意見があるけれど、現実をしっかり見つめなければなりません」と安易な輸出論の危うさに警告を発する。
 政府は農産物輸出額を24年の4497億円から1兆円にするとしているが、農産物に限ればその輸出額は2680億円。その大部分は、たばこやアルコールなどの加工品で生鮮品はわずか155億円にすぎない。
 輸出先も比較的規制が緩く購買力の高い香港、台湾、シンガポールが中心で、市場規模が大きい中国は、厳しい放射能検査や検疫、輸入手続きの不明瞭さなどの障壁がある。しかも、香港やシンガポールでは地元産や韓国産、中国産さらには日本産同士の競合など厳しい環境にある。
 そこで全農グループとしては、輸出窓口を営販企部輸出推進課に一本化することで、商流と物流に合理化メリットにつなげ、「これまで地道に取組んできた常設売場の確保(24年度62店舗)をさらに拡大(25年度100店舗)していくとともに、宅急便や業務用など新たな業態への売り込みにも挑戦していく」。

◆TAC活動をステップアップし地域営農を振興

25年2月19?20日開催された第7回国産農畜産物商談会 最後に平成19年から本格的な活動を始めたTACについて聞いた。
 24年度末現在で、277JAでTACシステムが活用され、1641人のTACが11万3000戸の担い手を訪問。年間86万3000件の面談記録を蓄積している。
 今後の課題として中澤部長は「担い手生産者とともに、地域営農振興をはかり、その結果をJAの事業拡大につなげる」ことを強調。そのためには、活動のステップアップが必要だとも。
 TACの活動は6つのステップがあるが、24年度末で最高レベルのステップ5?6に達しているJAは全体の40%。これを27年度末には80%にすることを目標としている。
 また、さきに述べた「大規模営農モデル構築」の「メインプレーヤーとして活躍することを期待」しており、構築されたモデルを地域で水平展開するときにTACが地域に提案する役割を担っていくと位置付けている。


(写真)
25年2月19?20日開催された第7回国産農畜産物商談会


【特集・元気な国内農業をつくるために“いま全農は…”】

全農特集にあたって 奮闘するJA全農のトータルな姿を (13.10.10)

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