生産資材:元気な国内農業をつくるためにいま全農は
【生産資材部】柿並宏之部長に聞く 新たな付加価値をつけ営農を支援2013年10月11日
・3部連携で低コスト化を実現する
・提案型事業の柱、ICTクラウド
・栽培技術を科学的に継承していく
・簡易に低コストで導入できる「うぃずOne」
・農家の信頼強める「農機検定制度」
・「プラント施工管理」の検定を創設
・鳥獣被害対策も課題に
全農の生産資材事業は、園芸ハウスや被覆資材、米袋・段ボールなどの包装資材、農業機械、農業施設、農住事業まで多岐にわたる品目を取り扱っている。その各事業に"横串"を刺し、部としてのアイデンティティを保持するために「5つのエンジン」で事業をリノベーションし、JA・農家組合員の営農を支援していこうと考えている。
そこで柿並宏之全農生産資材部部長に、当面する特長的な取組みを聞いた。
◆3部連携で低コスト化を実現する
生産資材部が掲げる「5つのエンジン」とは、[1]低コスト・省力化などの生産支援、[2]提案型事業や新たな事業開発、[3]購買力の強化、[4]人づくり、[5]震災復興対応、の5つだ(詳しくはJAcom2013年2月20日付記事参照)。
この5つのエンジンで事業を「リノベーション」していこうと考えているわけだが、柿並部長はリノベーションについて建築用語だが「古い建物などを単にリフォームするのではなく、『新たな付加価値を与える』ことを目的として改修する」ことだと考えている。
つまり、「新たな付加価値」をつけた事業を展開することで、JAや農家組合員の営農を積極的に支援していこうというわけだ。そして「低コスト・省力化」は、生産資材事業に関係する営農販売企画部、肥料農薬部、生産資材部の3部共通のテーマであり、生産資材全体で「どれくらい低コスト化できる」か、3部が連携して取組んでいく。
◆提案型事業の柱、ICTクラウド
そうしたなかで、いま生産資材部が力を入れているのが、「園芸資材の推進」だ。なかでもエンジン2の「提案型事業や新たな事業開発」の大きな柱である「ICTクラウドを活用したハウス、アグリネット」の普及だ。
これは全農が、ネポン(株)、NECと協力し、開発したもので、生産者は、モニタリングセンサー、アグリネットクラウドコントローラをハウス内に設置することで、栽培中のハウス内の情報をスマートフォンやタブレット、パソコンで手軽に確認できる。
主な機能は、警報、環境モニタリング、情報管理ツールの3つだ。例えば「警報機能」では、ハウス内加温機の不着火などのトラブルや、設定温度の上限・下限を超えた場合などに、そうしたトラブル情報を電子メールで生産者に連絡する。生産者がそのハウスにいなくてもハウス内の温度異常を早期に認識でき、作物への影響を最小限に抑えることが可能になる。
「環境モニタリング機能」では、ハウス内の温度、湿度、日照量、CO2濃度、積算日射量などの項目を、数値とグラフで表示するので、さまざまな栽培管理にこのデータを活用することができる。
「情報管理機能」は、ハウス内の環境測定が15分ごとに記録されており、そのデータをダウンロードすることもできる。そのことで、ハウス内環境の現状把握だけではなく、機器・資材の効果、栽培条件履歴を記録し、ノウハウを蓄積することができる。
◆栽培技術を科学的に継承していく
これまで「生産者が経験と勘で栽培してきたが、その生産者が高齢化しており、これまで蓄積してきたノウハウを次世代に継承することができるのか」。そして「科学的に継承することはできないのか」という問題意識がこのICTクラウド開発の出発点だったと柿並部長は語る。
そしてこの「アグリネット」では、最新のIT技術を活用することで「線をつながなくても、ハウスなど生産現場にパソコンを置かなくてもデータが蓄積でき分析できる」ようになったことが大きいという。
さらに先進県ではすでに取り組み始めているが、全農としても多くのハウスの「栽培データを蓄積・分析し、それを地域内などで水平展開できるようなハード・ソフトにするための実験を行っていきたい」。そして「栽培技術とセットになった生産資材供給をする。その『元年』にしたい」というのが、柿並部長の願いだ。
なぜなら生産資材だけでは「低コスト化」といっても限界があるからだ。(JAcom2013年10月10日付記事参照)
◆簡易に低コストで導入できる「うぃずOne」
園芸資材の推進でいま力を入れているのが、全農が開発した簡易に低コストで養液栽培を導入できるトロ箱養液栽培システム「うぃずOne」だ。
「うぃずOne」は、[1]液肥混入器「ミニシステム」、[2]潅水資材(ドリッパー)、[3]発泡スチロール栽培槽「プラスBOX」、[4]園芸用培土・パーライト、[5]液肥(1液)、の5点で構成されている。
「ミニシステム」は、制御装置を乾電池で動かすので、水圧があればどこでも設置できる安価な液肥混入機だ。また「プラスBOX」は全農と大手発泡スチロールメーカである羽根(株)が共同開発したトロ箱養液栽培専用の栽培槽だ。従来の栽培槽に比べて排水性・利便性などの機能が強化されている。
平成25年から本格販売されているが、簡易に低コストで導入できることから、水稲育苗ハウスや遊休ハウスなどで有効活用できる栽培システムとして、いま注目されている。
なお、本特集の冒頭の現地ルポ「援農いんば」でも水稲育苗ハウスで活用されている。また全農の「グリーンレポート」529号から531号では、具体的な導入事例に基づいた設置手順や定植などの初期管理などについて紹介されている。
(写真)
軽量で設置が容易と好評なトロ箱養液栽培システム「うぃずOne」
◆農家の信頼強める「農機検定制度」
提案型事業・事業開発とともにいま柿並部長が力を入れているのが「エンジン4 人づくり」だ。
その一つが平成23年度から実施されている「JAグループ農業機械検定制度」だ。
農業機械では「大型で高性能なものが、ある程度売れている」という。しかしこうした高性能農機は、マイコンなどを搭載しており、「高度な整備・修理技術・能力が問われている」といえる。
そのため、経験年数に応じた農機担当者のスキルアップを目的に、実際の修理・整備に必要な農機の機能や、メーカー固有の機構・新技術、納品・安全指導など、より実際の業務に密着した内容を取り入れて実施されているのがこの「JAグループ農業機械検定制度」だ。
23年度は2級検定を実施し、103名が受検したが、2級サービス士として認定されたのは40名だった。24年度はさらに高度な知識・技能が求められる1級検定を実施。90名が受検したが、1級サービス士として認定されたのは8名だった。
国(厚生労働省)にもこうした制度があるが、それよりも「かなりレベルが高い」といえる。
25年度は2級検定を実施するが、136名の受検申し込みがあり、11月に学科試験、12月【?】2月に実技試験を実施する予定となっている。
生産資材部としては、初任担当者を対象とした「農業機械基礎講習会」とこの「JAグループ農業機械検定」を、農機教育研修体系の中心に位置づけ、知識の修得と技術の研鑽によってアフターサービス対応を高め、「農家との信頼強化に取組んでいく」ことにしている。
(写真)
レベルが高いJAグループの農業機械検定制度の試験風景
◆「プラント施工管理」の検定を創設
「人づくり」では、カントリーエレベーター、ライスセンターなどの米麦施設や選果場などの共選施設などJAが運営する施設の計画・設計・施工管理を全農は支援しているが、プラント(機械設備)担当者を育成することで、これらの技術水準と、体制強化をはかっていく。
いままでこうした事業を担ってきた「団塊の世代」がリタイアし、それに続く若手の人材が不足しており「育成は急務」であり信頼される事業の継続のために「現業としての専門性をもった人づくりは必須の課題」だと柿並部長は強調する。
そこで全農では「プラント施工管理担当者認定制度」を創設する。この制度では、経験や技能を数値化し、第三者を含めた審査委員会の判定を経て、全農が認証書を発行することにしている。
◆鳥獣被害対策も課題に
全農では25年3月から急増する東住被害対策の一つとして、イノシシ、シカ、サルなどを対象にした電気柵の取扱いを始めた。電気柵の設置・施工は比較的簡単で、コストも比較的安価でありながら効果の高い資材だ。
そのため市町村単位で、電気柵への補助事業を行っているケースもあるので、全農としては説明会・展示会などを積極的に行っていきたいと考え、「鳥獣被害対策講習会」を開催し、鳥獣害対策の現状と要因、イノシシ、シカ、サルなど獣種別対策、鳥獣害対策の事例紹介現地視察、電気柵の設置実技などを伝えていく。
(写真)
全国で大きな問題となっている鳥獣被害対策用に設置されている電気柵
【特集・元気な国内農業をつくるために“いま全農は…”】
・全農特集にあたって 奮闘するJA全農のトータルな姿を (13.10.10)
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