生産資材:JA全農生産資材事業
JA全農生産資材事業がめざすもの―次期3か年計画の重点課題を中心に JA全農・柿並宏之生産資材部長に聞く2013年2月20日
・5つのエンジンで、JA・組合員の営農を支援
・WebやICTクラウドなど最新技術を活用
・CEや施設の再編をJAとともに考える
・園芸用農業機械の開発をメーカーと
・事業の広域化・一体化を促進
JA全農はこの4月新たな「3か年計画」に取組むために組織討議を行っているが、その大きなテーマは「元気な産地づくり」と「国産農畜産物の販売力強化」だという。そこで「元気な産地づくり」のためにJA全農生産資材事業はどのような取組みをしていくのかを、柿並宏之生産資材部長に聞いた。
提案型事業の拡大で元気な産地づくりを支援
生産と消費の現場に踏み込んできめ細かく対応する
◆5つのエンジンで、JA・組合員の営農を支援
――JA全農では4月からの次期3か年計画を検討されていますが、そのメインテーマは「元気な産地づくり」と「国産農畜産物の販売力の強化」と聞いています。そのなかで生産資材事業がめざすものを一言で表すとどういうことになりますか。 「生産資材事業のメインテーマは『5つのエンジンで事業をリノベーションし、JA・組合員の営農を支援』です。“「リノベーション」”は建設用語ですが、単なるリフォームではなく、付加価値をつけて事業を再構築していくという意味です。生産資材部が担当している生産資材、農業機械、建設の3事業に横串をさして、同じテーマで取組めるようなキャッチフレーズにしました」
「そしてJA・組合員の営農支援を通じて、次期3か年計画のメインテーマである『元気な産地づくり』、特に生産振興に貢献していこうということです」
――「5つのエンジン」というのは…
「(1)事業の効率化―事業運営体制の広域化・一体化など、(2)事業開発―新規事業等を継続して開発・開拓、(3)提案型事業の拡充―ソフト型事業・商品などを提案、(4)人づくり―不足・成長・研究開発分野の人材を育成・強化、そして(5)震災復興対応―将来の持続的発展を考慮した復興支援、の5つです」
提案型事業の拡充
◆WebやICTクラウドなど最新技術を活用
――「5つのエンジン」のなかでも「提案型事業の拡充」が中心的な課題ではないかと思いますが…
「一つめは、JAの受発注事務の合理化につながり生産法人や大規模生産者等の担い手にJAを一層利用してもらうための支援ツールとして『JA版資材Webツール購買システム』の開発に取り組んできました。生産者がWebを通じて発注でき、そのデータがJAを通じてメーカーまでつながるシステムで、25年度以降、実証試験を行いながら、順次、県域やJA域に普及していきたいと考えています。このシステムが普及するとJAの受発注業務の合理化につながります」
「また、生産法人や大規模生産者等の担い手にもJAを一層利用してもらうための支援ツールとしたいというのが開発の目的です」
「二つ目は、営農販売企画部が取組む大規模営農類型モデルと呼応する形で、園芸用高機能ハウスを設置して、実験的に生産から販売まで取組み、そのノウハウを農家に普及して行きたいと考えています。25年度は調査をして26年度から着工する計画です」
「これはいま全農が取組んでいるハウス内の温度や炭酸ガス濃度などを自宅のPCで管理・コントロールできるような『ICTクラウド』技術を導入するとともに、全農が導入したアンジェレ(ミニトマト)のような新品種の野菜等を栽培から販売まで実験的に行って、そのノウハウを蓄積し、将来的には農家にそれを普及していくことを考えています」
――施設園芸のレベルアップにつなげたいということですね。
「オランダに比べると日本の施設園芸はいくつかの点で遅れていますから、生産資材部としても営農に一歩踏み込んで資材の供給のあり方などを考える時期に来ていると思います」
◆CEや施設の再編をJAとともに考える
「三つめは、農業機械のレンタル事業を現在行っていますが、その発展型として『オペレーター付レンタル事業』への挑戦です。これは生産現場での労働力不足や高齢化に対応して、オペレーターによる機械作業を付加したレンタル事業というものです」
「四番目は、昭和40年代から50年代に建設されたカントリーエレベーター(CE)や選果施設などが老朽化し修理が必要だったり、稼働率が落ちるなどの問題があって、再編整備が必要な時期にきています。そのためCEについては、全農がJAの方々と一緒になって、将来の方向を考える『CE総合コンサル』に取組んでいます」
「CE以外でも、施設の総コスト低減とか耐震構造化、農住事業では賃貸住宅のリニューアルなどについても『こうしたらどうですか』と提案をして、更新する取組みに力を入れていきます」
◆園芸用農業機械の開発をメーカーと
――農業機械関係ではどうですか。
「農機については、従来は水稲用を中心にトラクター、コンバイン、田植機などを普及し、機械化体系が整備されてきましたが、これからは園芸用の農業機械の開発に取組んでいかなければいけないと考えています」
「これは産地振興とも関係しますが、新たな品目を作付けしていこうと考えたときに、一番ネックとなるのが作業性です。作業性や規模拡大の問題を考えると定植や収穫のための農業機械が必要です。園芸用農機を低コストなレンタルで提供できれば、作付けをさらに拡大してもいいという生産者の声もありますので、この開発を農機メーカーの協力を得て、進めていきたいと考えています」
(写真)
園芸用農業機械・キャベツ収穫機
事業の効率化
◆事業の広域化・一体化を促進
――そうした「提案型」事業を推進していくための「事業の効率化」については…
「農機事業では一体運営の取組みなどで収支を改善し、経営体質を強化していきます。現在、JA・県域一体運営を17県73JAで行っていますが、トータルでは年々収支が改善され、23年度は事業利益段階で黒字化しています」
「もう一つは、建設事業で、県域を越えた広域施設事業所の組成に取組んでいます。広域事業所で1級建築士など技術者を集約することにより、技術水準の向上と人材の有効的活用を両立させます」
事業開発
◆「負けない商品」の開発と問題解決型事業へ
――「事業開発」については… 「主なものは4点あります。まず資材で価格・品質・サービスのいずれか一つでも『負けない商品』を1年に最低でも一つは開発をしていくことです」
「二つ目は、段ボール原紙、生分解マルチなどの原料の海外輸入ソースを多元化して購買力を強化していきます」
「三つめは、量販店や生協などの実需者、直販施設など小売りニーズに対応する包装資材やパッケージ提案、さらに陳列の仕方などに踏み込んだ提案ができないかと考え、販売部署と連携して、パッケージ側から提案をすることで販売を支援していくことです。すでに植物由来のパッケージを提案するなど、実績をあげてきています」
「四つ目は、農機のJAグループ独自型式の開発です。いま世界的に見れば農業生産は成長していますから、農機の需要も全世界的に見れば伸びています。一方で、日本は需要が減少していますから、生産台数が多い海外へ輸出する農機に手を加え国内仕様にすれば、コストを抑制することができます。このやり方で取組んでいるのが『JA独自型式』の取組みです」
――従来と比べると非常にきめ細かく、生産や販売の現場に踏み込んで対応していこうとされているという印象を持ちましたが…
「高度成長期はメーカーが作ったものを単品供給していれば売れましたが、現在は飽和状態になりコスト低減するのはもちろんですが、生産や消費の現場に入りそのニーズに応えた課題解決型事業に変えないと難しい時代になったといえます。これは生産資材だけではなく他の事業にも共通することだと思います」
(写真)
生鮮野菜・青果用の防曇袋
人材育成
◆生産資材研究室設置や独自の検定制度を実施
――こうした事業を支え推進していくための「人材育成」も大きな課題ですね。
「従来は品目知識やノウハウなど基礎的な講習や研修を実施してきましたが、これは引き続き実施していきます。また、この4月から営農・技術センター(平塚)に『生産資材研究室』を設置し、検査・講習に加えて、研究・開発を強化していきます。」
――農機の検定制度を設けられましたね。 「JAグループ独自の試験制度として設定しました。これは、農機も従来からのメカニカルな修理だけではなく、電気系統とかIC関連の知識がより一層必要とされますし、今後、排ガス規制が本格化してきますので、それらに対応した修理・整備技術がもとめられます。さらにいえば、メーカーの方は自社の農機は分かりますが他社の農機は分かりません。しかし、JAはさまざまなメーカーの農機を扱っていますから、各社の農機を修理できるという強みがありますので、修理内容の高度化をしようということも、この検定制度の狙いでもあります」
「人材育成では、先ほども話にでましたが、1級建築士など技術者の確保が課題ですが、中途採用でも即戦力を確保したいと思います。またプラント担当者の育成も大きな課題です」
(写真)
JA農業機械検定制度の試験風景
震災復興対応
◆人材を確保し復興支援に取組む
――最後に「震災復興対応」についてお願いします。
「園芸用ハウスの施工管理に人を派遣して支援しています。農機ではレンタル機を復旧作業に利用していただいています。施設関係ではCEやRCの整備について優先順位をつけながら施工管理しています」
「被災者の住宅を建てるために、県本部間で要員を派遣して農住事業に取組んでいます。この点でも人材が必要ですから中途採用を含めて人材を確保し、復興支援をしていくつもりです」
◆JAや生産者と一緒になって
――最後に全国のJA役職員と組合員のみなさんへのメッセージをお願いします。
「従来から取組んできた省力・低コスト化などの課題には引き続き積極的に取組んでいきます。
あわせて産地や消費地の現場ニーズにどう対応するのかという視点で事業開発に取組みます。
そして新たな品目に取組む生産者や産地との関わりを深め、JAや生産者の方々と一緒になって営農を支援し、元気な産地づくりに貢献していくというのが、私たちがこれからめざしていく道だと確信しています」
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