生産資材:元気な国内農業をつくるためにいま全農は
【肥料農薬部】水稲育苗箱全量施肥栽培技術「苗箱まかせ」で省力・低コスト化を実現2013年10月11日
・20年で労働時間は半分以下に
・本田への施肥を省略する究極の省力化技術
・全窒素肥料量の40%を減肥
・大規模経営ほど効果が高い低コスト化
全農肥料農薬部では、上園孝雄部長が語っているように、安定した生産と品質保持だけではなく生産コストを抑制するための資材や技術の研究・開発に取り組み、大きな成果を上げてきている。
そしてさらなる生産コスト抑制の切り札として提案しているのが「水稲育苗箱全量施肥栽培技術」だ。
◆20年で労働時間は半分以下に
1990年と2010年の米生産コストを比較すると「この20年で2割削減されているが、肥料・農薬代だけ見ると大きな変化はない」と上園部長。
それでは生産コストを削減した大きな要因はなにか?
それは、肥料・農薬の品質と技術の向上だという。具体的には肥料では、側条施肥や被覆肥料、農薬では育苗箱処理剤による本田防除の省力化などによって、施肥や防除時間が1990年の7時間から2010年には3時間強と半分以下となっている。この20年間、個々の肥料や農薬の価格は同じでも、機能や技術の向上で労働時間を減らし、省力化による削減効果があったということだ。

◆本田への施肥を省略する究極の省力化技術
水稲生産コストに占める肥料・農薬の割合は19%程度だが、これをさらにコストダウンするために提案されているのが「育苗箱全量施肥栽培技術」だ。
この技術は簡単にいえば、水稲の播種時に苗箱に専用肥料(苗箱まかせ)を施用することで、「基肥も含めた本田施肥を省略できる移植栽培における究極の省力化技術」だ。
「苗箱まかせ」(発売元:ジェイカムアグリ(株))の専用肥料は樹脂でコーティングされており、育苗期間中には溶けださず(肥焼けしない)、稲の生長にあわせて溶けだす。しかも地温の変化に対応して溶けるという「世界でももっとも精密な肥料」といえる。
例えば、地温が暑い年には稲の生育が早くなるが、肥料も早く溶出し生育にあわせて効く。反対に寒い年には稲の生育が遅くなるが、肥料の溶出もそれにあわせて遅くなる。天候の変化があっても「安定した稲」が生産でき、「農家経営の安定」に貢献することができる。
そして移植は、普通の田植え機ででき、雨の日でも作業は可能だ。
さらに、育苗箱施肥は究極の局所施肥であり、施用した肥料(窒素)の約80%が吸収される(窒素利用率が高い)ので流亡の少ない環境に優しい肥料と言える。
なお、秋田県立大学の試験では、局所施肥による雑草を抑える効果も指摘されている。

◆全窒素肥料量の40%を減肥
すでに、大規模農家モニター(関東のみ、25年)や各県での実証ほ場の設置など、普及への取組みが行われているが、25年産米での「苗箱まかせ」の展示ほ場は、福島の73、茨城38、山形28、岡山、福岡の18など全国42府県407カ所となっており、省力化・低コスト化をはかるこの技術への期待が大きいことが分かる。
それでは、「苗箱まかせ」を使うことで窒素肥料はどれくらい減らすことができるのだろうか?
現在、化成肥料(分施)を使用している場合は全窒素量の約30?40%の減肥が可能(目安)。一発肥料をしている場合は全窒素量の10?20%の減肥が可能(目安)だという。
それではコスト面ではどうだろうか。
◆大規模経営ほど効果が高い低コスト化
福島県のある法人の試算(平成21年)によれば、「苗箱まかせ」の使用によって肥料費を23%、労働費を23%、トータルの生産コストを9%削減することができたという。
また宮城のあるJAの場合(平成23年)、資材費のみの試算だが、
一発肥料による慣行栽培より肥料代が10aあたり7%削減された。また「苗箱まかせ」を入れる分培土量が減るので、培土代が10aあたり23%削減されたという。
福島の事例でもわかるように、直接、肥料代が減るだけではなく、生産コストに大きな割合を占めている労働費(労働時間)を、技術の向上で米の品質や収量を落とさずに減らすことができることは、農家経営にとって大きな魅力だといえる。
そして、こうした省力化は、単なる労働費の削減だけではなく水田の規模拡大や、他作物との複合経営化を通じ、担い手農家の所得向上を実現可能にする。
上園部長は「こうした技術を普及することで、トータルでの生産コスト抑制をはかっていきたい」と語った。

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