アベノミクスは小農切捨て2013年6月17日
安倍晋三首相が、アベノミクスの第3の矢である成長戦略の輪郭を示した。
農業政策をみると、その戦略目的が明確でない。食糧自給率の向上による食糧安保を目的にしていない。そのことは、先週も述べた。
今週は、農業構造政策を取り上げよう。これも食糧安保を目的にしたものではない。大規模化してコストを下げ、競争力を強めるという、これまで言い古された政策である。ここでは、企業の農地所有を認めるという、いわゆる規制緩和を用意しようとしている。
上の図は、現在の農業構造を示したものである。
「土地持ち非農家」という農家を入れると、このようになる。総数は390万戸である。このうちの大多数は、小規模な兼業農家や高齢農家である。この人たちの協力がなければ、大規模化は絵に描いた餅に終わるだろう。まして、この人たちを犠牲にして、切り捨てるような政策を、農村社会は受け入れない。
農家には有権者が1戸に2人いるとすれば、780万人になる。全国の有権者数は1億123万人だから、その7.7%である。この人たちの大多数が賛同しなければ、この政策は成り立たない。
◇
あらためて問おう。なぜ競争力の強化なのか。なぜ、それを究極の目的にするのか。この問いは、なぜ構造改革なのか、という問いでもある。
自由な競争はいいことだ、という信仰がある。市場原理主義である。信仰だから、なぜいいのか、という次の問いがない。ここで思考を停止する。すべてがうまくいくと考えるのだろう。これは、科学ではない。つまり、経済学ではない。だが、科学を装っているので政治に利用されやすい。
◇
コストを下げることはいいことだ。それを否定するつもりはない。だが、それは相手と競争して、相手を打ち負かすことを目的にしない。相手と切磋琢磨して、国民に良質な食糧を充分に提供することが目的でなければならない。
いま、日本の農業は、国民が必要とする食糧の39%しか供給していない。競争などしている余裕はない。協同して食糧自給率を高めねばならない。
だが、ここでいうコスト引き下げは、国際的な競争力の強化を目的にしている。コストが5分の1という、国際市場での強力な相手との競争である。
アベノミクスでは、米のコストを4割削減するという。だが、かりに、それが成功したとしても、国際競争で勝つことは、とうてい出来ない。ここには、そうした科学的な分析が全くない。
◇
しかも、そのために、いわゆる構造改革をして、小規模な兼業農家や高齢農家を切り捨てるのだという。そんなことが、農村で受け入れられる筈がない。
その上、日本の食糧安保は危殆に瀕する。だから、大多数の国民も、この政策を受け入れないだろう。
(前回 アベノミクスは食糧安保政策を棄てるのか)
(前々回 TPPは南北戦争を招く)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日
-
全国のうまいもの大集合「日本全国ふるさとマルシェ」東京国際フォーラムで開催2025年9月16日
-
産地とスーパーをつなぐプラットフォーム「みらいマルシェ」10月から米の取引開始2025年9月16日
-
3つの機能性「野菜一日これ一杯トリプルケア」大容量で新発売 カゴメ2025年9月16日
-
「国民一人ひとりの権利」九州大学教授招き学習会実施 パルシステム2025年9月16日