【コラム・森田実の政治評論】 世界的な大転換期 長期的視野で政治の出直しを2014年3月26日
・米ロ対立下で中国が主導権
・転換迫られる日本外交戦略
・集団的自衛権与党に反対も
・消費税の導入政権の正念場
世界政治も日本政治も、地盤が弱くなってきました。資本主義はレーガン革命以来の市場原理主義が重荷になってきています。中国においても鄧小平路線の修正が迫られるようになってきました。この結果、世界の政治・経済の地下に変革のエネルギーが溜まってきました。一つ事件が起これば、次々と連鎖反応を起こし、混乱が拡大するような不安定期が始まりました。いま、政治の最高責任者に求められているのは、理性と平和への強い意志です。一歩間違えば熱い戦争になるおそれがあるのです。
◆米ロ対立下で中国が主導権
欧州において変化が始まりました。ウクライナの大衆デモによる政権交代は、クリミア自治共和国の独立宣言とロシアへの編入という事態に発展してしまいました。ロシア国民のなかに強い排外主義的ナショナリズムの嵐が吹き荒れ始めました。もしも、この排外主義的ナショナリズムが他国に拡大するようなことになれば、平和は崩壊するおそれ大です。
新たな米ロ対立のなかで、中国が国際政治のキャスチングボートを握る可能性が生まれました。米国は中国への接近を強めます。この結果、米中日3国の関係は変わります。中東においても大変化の予兆が見られます。
◆転換迫られる日本外交戦略
日本にも変化の兆しがあります。一昨年(2012)12月、政権をとって以来、絶対主義的政治力を発揮していた安倍首相の政治環境が変化を見せ始めました。
外交面では、日本・ロシアの友好関係を基軸にした対外政策は、ロシアのクリミア編入の決定によって、あっという間に崩壊しました。対ロシア外交が厳しくなれば、いままで強硬一筋だった対中国外交と中国包囲網形成戦略を変えざるをえなくなりました。
◆集団的自衛権 与党に反対も
安倍首相は米国政府の仲介を受け入れて、朴槿恵韓国大統領を含む日米間首脳会談の道が開けました。このために安倍首相が目標としてきた「河野談話見直し」を撤回し、「河野談話見直さず」を明言せざるをえませんでした。「戦後レジュームからの脱却」をめざしてきた安倍政治の大きな政策転換です。無理は通らないものです。
TPP交渉も安倍首相は苦しくなってきました。オバマ米大統領の対日姿勢は厳しくなりました。安倍内閣に全面的に譲歩するよう求めてきています。安倍首相は米国の要求と国内における公約との矛盾に苦悩しています。「忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず」の板挟み状態におかれているのです。安倍首相には日本の農業を断固として守り抜くとの強い決意をもってTPPをめぐる日米交渉に取り組む以外に道はないのです。早く決断すべきです。
安倍政治の最大の問題は、解釈改憲による集団的自衛権の行使容認問題です。これは米国政府が安倍政権に強く求めています。米国は日本の自衛隊を米軍の下請にしようとしているのです。ただし、憲法を変えずに解釈だけ変えることには無理があります。
国内では日本維新の会、みんなの党、民主党の一部議員などが、安倍首相の解釈改憲による集団的自衛権の行使容認を支持しています。
しかし、連立与党のパートナーの公明党は賛成しません。表面上は穏やかな態度ですが、反対の決意は強いと私は思っています。自民党と公明党の綱引きが展開中です。
安倍首相にとって気になり始めたのが、自民党内の動きです。最近までは、400名を超える自民党の衆参両院の国会議員のなかに、安倍首相を批判する議員はほとんどいませんでした。ところが最近、ベテラン議員を中心にして、「閣議決定による集団的自衛権の行使容認」への反対論が広がり始めました。与党と国会に諮ることなく内閣だけで決めることは困難です。
党内議論にかければ、早期の決定を求める米国政府をイライラさせることになります。安倍内閣が集団的自衛権の行使容認を閣議決定すれば、日本の自衛隊は専守防衛から脱皮し、米軍を攻撃する「敵軍」への先制攻撃が可能になります。「敵国」が核ミサイルを保有していれば、日本は核ミサイル攻撃の対象にされます。核ミサイルを持たない日本は米国への依存を深めざるを得なくなります。ここに米国の狙いがあります。
◆消費税の導入 政権の正念場
以上は政治面での新たな動きですが、経済面で大きなことが始まります。それは、4月1日からの消費税率の引き上げです。「消費が減り、景気が悪くなる」との見通しは、どの立場の人のなかにもあります。パニック的に悪化する可能性も考えられないことではありません。どうなるか? 両説あります。アベノミクスの正念場が近づいています。
安倍政権を支えてきたのは高株価と高支持率です。この二つが4月以降どうなるでしょうか? 安倍政権は正念場に直面します。私は5月~8月の間に、国内政治にも激動が起こる可能性があると思います。政治の、新しい事態への対応能力が試されます。大切なことは政治がバランスを回復することです。急ぎ過ぎは禁物です。
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