【コラム・ここがカンジん】農家の経営確立が先 2014年4月25日
営農関連事業の赤字を信用・共済事業の収益で補てんするというのが総合JA発足以来のJAの収支構造の特徴だ。もちろん、農業地帯で有利な農業展開ができる地域で営農関連の事業が黒字のJAもある。しかし、この収支構造はJAを通ずる一般的なもので、JAの経営体質ともなっている。このため、JA全国大会議案でも繰り返し部門収支の確立が決議されてきている。
こうしたJAの信用・共済事業収益依存の経営体質は、JAが本気で農業振興に取り組んでいない証拠だということでJA批判が行われる。いわゆる「信用・共済事業分離論」の登場だ。JAから信用・共済事業を分離して営農経済事業に専念させればもっと農業振興が進むという訳だ。ちなみにこれまでもたびたびJA批判が行われているが、この信用・共済事業分離論こそ今回のJA批判の本質である。この信用・共済事業分離論はJAのアキレス腱をついたもので、信用・共済事業の分離が現実のものとなれば、ほとんどのJAは確実に消滅する。
国の政策としてJAの存在はもはや不要という認識になれば、あるいは現実になるかも知れないが、その前に、そもそもどのようにして信用・共済事業収益の依存体質ができ上がっているかの本質的な問題を考えなければ、仮に信用・共済事業の分離が実現しても事態の解決にはつながらない。
実情から言えば、JAが信用・共済事業の収益を頼りにしているからJAの営農関連事業の赤字が発生している訳ではなく、おおもとの組合員の営農経済が厳しいから、JAの営農関連事業も赤字になっていると見るのが正確なところだろう。とくに、直接の収益を生まない営農指導事業の経費を負担していることは、経済事業の収支に大きな負担となっている。
JAの各事業部門は、単位JAだけでなく組合員(組織)―JA―連合組織といった系統組織全体でコスト負担をしており、JAの営農関連の赤字の原因は系統経済事業全体のものとしてとらえなければならない。繰り返しになるが、JAの営農関連事業の赤字の原因は、根本である組合員の営農経済の厳しさを反映したものであって、組合員の営農経済の確立がなければ、たとえ信用・経済事業を分離して農業専門農協に衣替えしても事態の解決にはつながらない。そのことは、現実の専門農協の経営不振が如実に物語っている。
政府の規制改革会議で信用・共済事業分離論が進まないのは、さすがにこうした現実に目をそむけることができないからだろう。
もちろん、信用・共済事業の収益に安易に依存すべきでなく、もたれ合いの経営は厳に排除されるべきことは言うまでもない。また、赤字部門には若くて才能のある人材が回されず、赤字が益々増幅すると言った悪循環も発生する。JAでは、こうした困難を乗り越え、農業振興・組合員の営農改善に努力すべきことは当然のことだ。
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