【コラム・ここがカンジん】自己改革の視点 真の自主・自立JAへ2014年9月11日
今回のJA批判は実質的には農水省によって行われた。前回見たように農水省はJAの職能組合化の方向を鮮明にして、農業政策の遂行責任さえJAに押しつけてきた。それは農水省自らの組織の自己防衛の姿といえるものでもある。それでもJA全中は、農水省の意向を体してJAの指導を行ってきた。それは、JAが協同組合としてどうかというより、農水省の指導に従った方が組織として得策であると判断したことに他ならない。
ところが今回、JA全中は農水省から三くだり半を突きつけられた。TPP反対運動で反乱を起こした訳でもなく、むしろ農水省(夫)に対してよき妻を演じてきたつもりの全中としては、なぜこのような事態になったのか戸惑うばかりであろう。両者がどのような関係を持つのかは、今後の議論の行き先次第であるが、両者の行き違いは婚姻関係における性格の不一致にあると言っていい。性格の不一致とは、農水省がJAを農業振興の手段に位置づけているのに対して、JAは協同活動によって農家・組合員のニーズ・思いを実現する組織と考えているということだ。
◇ ◇
それにしても、JAはその存在が法律で守られ、かつ連合組織でガードされている、誠に稀有な存在だ。一部のJAを除いて多くのJAでは、経済事業においては共同購入・共同販売が行われ、信用・共済事業では推進しやすい組合員を相手にひたすら渉外活動を行うというほとんどリスクを負わない経営が行われており、こうした経営姿勢は、真の意味で協同組合あるいは企業経営者としてあるべき姿なのか、規制改革会議の議論を待つまでもなく今一度見直すべきところであろう。しかし、一方でこうしたJAの経営姿勢は、組合員主体の運営(言い換えれば協同組合的ともいえるリスクを負わない運営)というJA理念と深くかかわる問題であり、その改革は容易なことではない。
今回の提言では、農業振興のためのJAの自主性が強調されているが、実のところは、全農の株式会社化、信用事業の農林中金への事業譲渡などの信共分離、中央会の全国指導の否定というように、単位JAが丸裸にされる方向が打ち出されている。それは、結果として組合員の協同活動のもとになる単位JAの解体をもたらすものになるであろうことは疑う余地がない。
◇ ◇
以上のことを重ね合わせれば、JAの自己改革の視点は、「自立JAの確立」としてとらえられるべきであろう。それは、連合組織に対するJAの良いとこ取りの姿勢が許されるということでもない。今回の答申を受けて早速JAの応援団(学者・研究者など)から、定番のグローバル化に対抗するJAの存在価値・役割の重要性が指摘されている。それも必要であろうが、事態はそれほど甘くはない。
全国694のJA経営者が、事態を深刻にとらえ、協同組合・企業経営者として会社組織では当然とされるリスクを取る「協同組合経営者」としていかに自立できるかということこそが、今次JA自己改革の基本命題ととらえるべきであろう。全中の総合審議会などでの自己改革の視点は何時ものように「組合員の視点」がキーワードなのだが、これにはJAが日常的に組合員の意見を聞く体制にあることが前提だ。規制改革会議での"JA解体"の議論は、組合員はもとより、JA役職員の間でどれほど自分自身の問題としてとらえられているかどうか。おざなりの議論が行われるとすれば、将来的により深刻な事態を招くことになる。
◇ ◇
今後の議論の行く末は議論を主導するJA全中の力量いかんにかかっている。行政や連合組織などの利害調整のなかでいかにJA自らの自己改革にどれだけ切り込んでいけるのか。議論は組織の自己防衛のためであってはならず、今こそ協同組合原則の「第4原則;自主・自立」を単なるお題目にしないその実践が問われている。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(173)食料・農業・農村基本計画(15)目標等の設定の考え方2025年12月20日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(90)クロロニトリル【防除学習帖】第329回2025年12月20日 -
農薬の正しい使い方(63)除草剤の生理的選択性【今さら聞けない営農情報】第329回2025年12月20日 -
スーパーの米価 前週から10円上がり5kg4331円に 2週ぶりに価格上昇2025年12月19日 -
ナガエツルノゲイトウ防除、ドローンで鳥獣害対策 2025年農業技術10大ニュース(トピック1~5) 農水省2025年12月19日 -
ぶどう新品種「サニーハート」、海水から肥料原料を確保 2025年農業技術10大ニュース(トピック6~10) 農水省2025年12月19日 -
埼玉県幸手市とJA埼玉みずほ、JA全農が地域農業振興で協定締結2025年12月19日 -
国内最大級の園芸施設を設置 埼玉・幸手市で新規就農研修 全農2025年12月19日 -
【浜矩子が斬る! 日本経済】「経済関係に戦略性を持ち込むことなかれ」2025年12月19日 -
【農協時論】感性豊かに―知識プラス知恵 農的生活復権を 大日本報徳社社長 鷲山恭彦氏2025年12月19日 -
(466)なぜ多くのローカル・フードはローカリティ止まりなのか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年12月19日 -
福岡県産ブランドキウイフルーツ「博多甘熟娘」フェア 19日から開催 JA全農2025年12月19日 -
α世代の半数以上が農業を体験 農業は「社会の役に立つ」 JA共済連が調査結果公表2025年12月19日 -
「農・食の魅力を伝える」JAインスタコンテスト グランプリは、JAなごやとJA帯広大正2025年12月19日 -
農薬出荷数量は0.6%増、農薬出荷金額は5.5%増 2025年農薬年度出荷実績 クロップライフジャパン2025年12月19日 -
国内最多収品種「北陸193号」の収量性をさらに高めた次世代イネ系統を開発 国際農研2025年12月19日 -
酪農副産物の新たな可能性を探る「蒜山地域酪農拠点再構築コンソーシアム」設立2025年12月19日 -
有機農業セミナー第3弾「いま注目の菌根菌とその仲間たち」開催 農文協2025年12月19日 -
東京の多彩な食の魅力発信 東京都公式サイト「GO TOKYO Gourmet」公開2025年12月19日 -
岩手県滝沢市に「マルチハイブリッドシステム」世界で初めて導入 やまびこ2025年12月19日


































