農協の正念場2015年4月20日
北海道の知事選は、与野党が激突し、全国から注目されていた。北海道農政連は、自民、公明が推薦した高橋はるみ候補者を支持し、民主、共産などが応援した佐藤のりゆき候補を見限った。結果は、高橋氏が149万6915票で佐藤氏が114万6573票だった。それだけの大差で高橋氏が勝った。
なぜ、道農政連は農協攻撃を続ける自民・公明が推薦した候補者に相乗りし、農協攻撃に反対の野党が応援した候補者を見限ったのか。それは、新農協法案で、全中会長と首相が握手をしてしまったからだという。全中会長には、准組合員問題を先送りできた、という満足感に似た思いがあったのだろう。
一方、道農政連は、この握手をみて、全中に対し、問題を先送りしただけで妥協した、という強い不信感を抱いたのだろう。
高橋氏を自民、公明が推薦したとはいっても、彼女は農協主導の反TPP運動の熱烈な賛同者だ。全国知事会では、反TPPの急先鋒だ。今後も反TPPを貫くだろう、と期待されている。だから道農政連が支持したのだろう。
21年前のことだが、ガットのウルガイランドで、「例外なき関税化」を受け入れたが、そのとき、当時の首相は「断腸の思い」といった。そして、米だけは関税化を回避した。それに対して、当時の全中会長は「満腔の怒り」を込めて抗議した。もちろん、二人は握手をしなかった。
昨日と今日は、日米の閣僚がTPPの協議をしている。事態は切迫している。万一、TPPが妥結し、「例外なき関税撤廃」を政府が受け入れたとしたら、全中会長は、どうするのだろうか。米だけは関税撤廃を免れたといって、また首相と握手するのだろうか。
もしも、そうなったら、全中から離反するのは、北海道農政連だけではないだろう。そうなれば、全中は新農協法案で建議権を失うだけでなく、ようやく新法で認められそうな代表権や総合調整権も、実質的に失うだろう。
◇
さて、こんどの知事選だが、自民、公明にとって北海道知事選は、滋賀、沖縄、佐賀での知事選の3連敗に続く知事選だった。だから、背水の陣で臨んだ。そして勝った。
これで、来年の参議院選は楽勝と思っているだろう。参議院選での実戦部隊である地方組織が強化されたからである。自民は、農協組織を巧妙な作戦に乗せて握手もしたし、自民側に取り込んだと思っているだろう。
安倍晋三政権は長期政権になるだろうと、ほくそ笑んでいるかも知れない。
◇
自信を強めた自公政府は、今後も農協攻撃を続けるだろう。農協から信用事業や共済事業を取り上げようとするアメリカからの圧力は、准組合員問題という形をとって、今後もますます強くなるだろう。財界も執拗に要求し続けるだろう。
政府は、当面の間は安保法制に力を集中している。だが、農協攻撃をやめた訳ではない。やがて復活する。
そのとき、農協がどのように反撃するだろうか。
◇
農協の反撃力の源泉は地方にある。この力を、全国規模でどのように結集するか。いまの全中に、その力があるか。
それが、全中に厳しく問われている。頭を下げ、下を向いて、内向きの自己改革をしているときではない。いかにして有利販売をするか、などという改革は不断に行うべきことで、実際に行っている。
誤解をおそれずに言えば、それは、いま緊急に取り上げるべき自己改革ではない。有利販売で所得倍増、などという政府の妄想に迎合しているときではない。そんな妄想は、TPPでスッ飛んでしまう。
◇
自己改革というなら、農協攻撃に対する反撃のための自己改革を、反TPP運動を強化するための組織改革を、まず第一に取り上げるべきだろう。そうすれば、全中は農協の全国代表機関としての役割りを果たすことになる。
先ずは、降りかかる火の粉を振り払うことである。それこそが、農業再建の、そして地方再生の第一歩である。
(前回 争点ぼけの地方選)
(前々回 全中・県中の名前は残った)
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