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【コラム・ここがカンジん】新ビジョン確立を2015年12月22日

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【福間莞爾 / 総合JA研究会主宰】

 農協中央会制度の廃止という衝撃的な法改正を伴った今回のJA改革は、戦後60年ぶりの改革ともいわれるが、その意味するところは、いまだ定かではない。一つの見方はアベノミクス・TPPの推進に邪魔となるからJAの影響力を削ぐ意図のもとに行われたとする官邸主導説。ここから出される結論は、内閣打倒ということになる。もう一つは、われわれは農協法の下に適切に活動を行っており、何も悪いことはしていないとする〝独善論〟。
 これには、農協法が改正されればそれに従うほかはなく、仮に改正によってJAが立ち行かなくなってもそれはそれでしょうがないとする究極のJAの国家下請け・管理論も含まれる。ここから考えられる対策は、政府方針はそれとして、違いがあっても自分は正しいとしてわが道を行くか、または政府方針に従順に従うということになる。JA改革に対するとらえ方は、今のところ、おおむね以上の二つがないまぜになったものではなかろうか。

◆農協改革

 官邸主導説、〝独善論〟ともに全く否定はできないが、これではJAの将来展望を切り拓いていくことはできないだろう。今回のJA改革は、基本的には1990年代に入って本格的に進展したグローバリゼーションが背景にあり、農業も国際競争力をつけなければ生き残れないという事情がある。昨年6月に閣議決定された「規制改革実施計画」でのJAの農業専門的運営の強化、信共分離、株式会社化、中央会の制度改革、准組合員の事業利用規制などは、これに対処するための政府のグランドデザインだったのである。また、戦後のJAの発展を可能にしてきたのは、「中央会制度」と「整促7原則」であったため、今回この内容を完全否定する法改正が行われた。
 さらに踏み込んで考えれば、今回の農協改革は、戦後の農業・農村の発展を支えてきたのは、農地解放による自作農政策とそれを支える稲作農家で構成する総合農協であったが、今や自作農主義は過去のものとなり、それと同時に稲作主体の土地持ち兼業農家で構成する総合農協の見直しが迫られていると見るべきであろう。
 短絡を恐れずに言うと、JAはこれまでの稲作中心の土地持ち兼業農家の利益代表・実現組織としての役割を終え、今後は農業者および農業を支える人々(准組合員等)によって構成され、その利益を代表・実現する組織へ転換することが求められているというべきである。
 このように考えると、政府の進める農協改革に対応するには、新たな総合JAの姿を模索する新ビジョンの確立と実践にあると言ってよい。それはこれまでの延長線のものでなく将来展望を切り拓く抜本的なものでなければならない。
 今後のJA改革の対応には、二つの道が考えられる。一つは、JA改革は自ら行うとして従来路線を突き進むこと。この結果は明らかであり、政府との溝がますます深まり、いずれ准組合員の事業利用規制の手加減と引き換えに、とくに信用事業について、預金者保護・リスク回避の名のもとに農林中金への機能・組織統合(信共分離)が進められ、総合JAを放棄させられたJAは解体の道を進むことになる。今JAはこの道を歩んでいると言っていいだろう。
 もう一つは前述のようにJA新ビジョンを確立し、農業振興の抜本策(例えば、総合JAの中に専門農協をつくるような諸方策、JA直営農場の全国展開の検討、6次化のための新組織の創設、JAによる農地・地権の集約・共有など)を打ち出す一方で、准組合員対策(JAとして准組合員の組織化を進め、将来的に限定的な議決権を付与することなど)を打ち立てこれを力強く実践していく道である。この道で待ち受けるJAの課題は、いずれも長年にわたって放置されてきたもので、とてつもなく大きなものである。残された時間はあまりにも短いが、JAが真に農業振興と地域貢献の役割を果たしていくためには、総合JAの底力を発揮する、この道しかないだろう。

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