野党のヤル気2016年1月25日
いったい、野党は政権を奪って、自党の政策を実行し、日本を良い国にしたい、という気概があるのだろうか。党員が政治家を志したとき、それが初心ではなかったか。いま、それがあるか。
以前、野党第一党の民主党の首脳が「今春の参院選の、その次の衆院選で政権を奪還したい」という主旨の発言をしていた。悠長なことだ。
彼は、今春の参院選が衆院選とのダブル選挙になる可能性を、全く考えていないようだった。ノンキなことだ。
政治の世界は「一寸先は闇」だという。正月早々に、老練な官房長官は「衆院は常在戦場」といって、ダブル選挙を匂わせていた。野党にその準備があるか。
ここで言いたいことは、野党支持を表明することでもないし、まして、押し付けることでもない。
農協には政党支持の自由がある。野党の支持者もいるし、与党の支持者もいる。両者が自由に議論している。それが、協同組合の大原則だ。自由な議論の結果、組合員の大多数が、TPPに反対している。
それは、農村の現実を見ようとしない評論家や学者の空論とは違う。農業の生産活動と、農村の生活に根ざした議論の結果である。
◇
農村での、こうした反TPP運動の実態が見えない政党は、こんどの選挙で農村から見捨てられるだろう。
与党は、この実態を横目でみながら、TPP問題を選挙の争点から外そうとして躍起になっている。TPPは、すでに決まったことだ。だから、いまさら争点にはならない。そのように言っている。
それに対して野党の多くは、農村の反TPP運動の実態を見ようとしない。TPPのアラ探しをするだけだ。TPPのアラは、いくつでもある。それに捉われて、政府を批判するだけだ。政権を揺るがすような議論をしていない。TPPの合意を覆すための戦略をもっていない。
ここで強調したいのは、このことである。
◇
TPP合意を覆すには、国会での批准を阻止することだ。批准を阻止するには、野党が選挙協力をして、多数派になることだ。ダブル選挙になることは、むしろ望ましい。そうなれば、衆参両院で一挙に多数派になれる。
だが、野党間の選挙協力が進んでいない。野党にヤル気があるのか、という疑問は、ここから発している。
◇
いまの参議院選挙区制のもとで、選挙の勝敗は1人区の勝敗が、選挙結果に大きく影響する。その1人区は、ほとんどが農村部にある。だから、選挙の勝敗の帰趨は、農村が握っている。
その1人区で、与党は選挙協力が進んでいるが、野党は進んでいない。これでは、野党に勝ち目はない。
多くの野党が、TPP反対の一点で妥協しあい、選挙協力をすれば、選挙に勝てる可能性は、大いに高まる。
そうなれば、与党も動揺するだろう。そうなれば、与野党間で真摯な議論がなされるだろう。与党の中からも、TPP反対の声が出てくるかもしれない。そして、TPPの再交渉や、加盟見送りの声が大きくなるだろう。そうしなければならない。
それを契機にして、政界の再編に進むだろう。そうして、1強多弱で行き詰まっている日本の政治を、活性化する展望が開けてくるだろう。
◇
その先頭に立つべき政党は、野党第1党の民主党である。
これまで、民主党の政敵である自民党の支持基盤は農村にあった。しかし、いまは違う。農村は是々非々である。だから、7年前の政権交代の原動力になった。
また、民主党の支持基盤は労組である。だから、民主党は労組に支配されていて、そのクビキから抜け出せない。その労組が農協と犬猿の仲にある。だが、それは中央組織だけのことで、地方組織は農協といっしょになってTPP反対の運動に加わっている。
いまこそ、地方が発信するTPP反対の声を政治に反映させて、政権交代を迫るチャンスだ。この際、TPPは民主党政権のときに言い出したのだ、ということを、農協の人たちは些細なこととして忘れることができる。
いまこそ野党は、地方の反TPPを基軸にし、小異を捨てて早急に選挙協力を進め、強引な与党に反省を迫るときだろう。
(2016.01.25)
(前回 TPPを参院選の主要な争点に)
(前々回 年寄り万歳)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
重要な記事
最新の記事
-
アケビの皮・間引き野菜・オカヒジキ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第356回2025年9月18日
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(2)病理検査で家畜を守る 研究開発室 中村素直さん2025年9月17日
-
9月最需要期の生乳需給 北海道増産で混乱回避2025年9月17日
-
営農指導員 経営分析でスキルアップ JA上伊那【JA営農・経済フォーラム】(2)2025年9月17日
-
能登に一度は行きまっし 【小松泰信・地方の眼力】2025年9月17日
-
【石破首相退陣に思う】しがらみ断ち切るには野党と協力を 日本維新の会 池畑浩太朗衆議院議員2025年9月17日
-
米価 5kg4000円台に 13週ぶり2025年9月17日
-
飼料用米、WCS用稲、飼料作物の生産・利用に関するアンケート実施 農水省2025年9月17日
-
「第11回全国小学生一輪車大会」に協賛「ニッポンの食」で応援 JA全農2025年9月17日
-
みやぎの新米販売開始セレモニー プレゼントキャンペーンも実施 JA全農みやぎ2025年9月17日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」ダイニング札幌ステラプレイスで北海道産食材の料理を堪能 JAタウン2025年9月17日
-
JAグループ「実りの秋!国消国産 JA直売所キャンペーン2025」10月スタート2025年9月17日
-
【消費者の目・花ちゃん】スマホ置く余裕を2025年9月17日
-
日越農業協力対話官民フォーラムに参加 農業環境研究所と覚書を締結 Green Carbon2025年9月17日
-
安全性検査クリアの農業機械 1機種8型式を公表 農研機構2025年9月17日
-
生乳によるまろやかな味わい「農協 生乳たっぷり」コーヒーミルクといちごミルク新発売 協同乳業2025年9月17日
-
【役員人事】マルトモ(10月1日付)2025年9月17日
-
無人自動運転コンバイン、農業食料工学会「開発特別賞」を受賞 クボタ2025年9月17日
-
厄介な雑草に対処 栽培アシストAIに「雑草画像診断」追加 AgriweB2025年9月17日
-
「果房 メロンとロマン」秋の新作パフェ&デリパフェが登場 青森県つがる市2025年9月17日