TPPのトラウマ2016年3月7日
TPPについて、政府は、国会で4月から審議を始め、6月1日の会期末までに批准したいようだ。その後、参院選に突入する。
TPP問題に一種のトラウマを持っていて、アメリカ主導のTPPには逆らえない、と考える人がいる。これまで、アメリカから散々に痛めつけられてきて、それが心の深い傷になっているのだろう。それがトラウマになって、TPP問題で、すくみ、たじろいでいる。
このトラウマの根源には、日米安保条約第2条の経済条項がある。アメリカはこの条項を根拠にして、日本の国益を侵し、自国の国益を追求している。
日本の財界は、その尻馬に乗って、私利を貪っている。また、大手の労組とマスコミは、財界の手足になって、それに追随している。そうして、農協を先頭にし、国益を守ろうとする反TPP運動を、切り崩そうとしている。だが、そうはいかない。
これに立ち向かうには、日米安保条約を真正面にとらえて、それに対峙するしかない。
◇
安保条約には、なぜ経済条項があるのか。それは、アメリカの軍事力による日本防衛の対価だ、といいたいのだろう。安倍晋三首相は、昨年4月、アメリカ議会で「TPPには...安全保障上の大きな意義がある」と演説し、その成立を誓った。
だが、それは違う。日米間の安保関係には問題がある。
日本は、軍事力を持たないし、使わないことを憲法で明示している。つまり、侵略や防衛という国際紛争を解決するために軍事力は使わない、という平和主義が国是である。
万一、侵略されても、軍事力、つまり、日本の軍事力はもちろん、アメリカの軍事力も使わないで、外交努力で解決する、というのが日本の国是である。
◇
この、日本の平和主義は、平和を愛する諸国民から高く評価されている。尊敬されてもいる。だから、自信を持っていい。
平和主義の日本は、戦後70年という長い間、他国を侵略したことはなかったし、他国から侵略されたこともなかった。だから、軍事力を使って他国の人を殺傷したこともなかったし、軍事力で日本人が殺傷されたこともなかった。だから、世界に誇っていい。
この70年間、アメリカも日本の防衛のために、軍事力を使って人を殺傷したことはなかった。
竹島問題や北方4島の問題でも、アメリカは日本防衛のために、軍事力を使ったことはなかったし、日本も軍事力ではなく、外交努力で問題に当たっている。
◇
以上のように、安保条約のなかの経済条項は、アメリカの軍事力の行使による日本防衛という給付に対する対価だ、という考えは事実と違う。アメリカが軍事力で日本を防衛した事実はなかった。
この70年間、アメリカからの、日本防衛という給付はなかったのである。だから日本は、給付なしで、アメリカに対して農産物市場の開放という対価を、70年間も払い続けてきたことになる。こんどはTPPで、日本は農業を壊滅させる、という対価を払おうとしている。
ここで言いたいことは、アメリカが日本を防衛しなかったことに対する不満では全くない。平和主義を掲げていたからこそ、日本を侵略し、攻め込もうとした国は、どこにもなかったことである。それにもかかわらず、アメリカは日本に対して、防衛するからと言って、多大の対価、つまり犠牲を払わせてきた。こんどはTPP加盟の要求である。
◇
アメリカの給付は、日本侵略に対する軍事力の行使だけでなく、軍事力の誇示と威嚇による、日本侵略の未然の抑止だ、という人がいる。経済条項は、それに対する対価だ、というわけだ。
しかし、日本は、侵略という国際紛争を解決するために、軍事力による威嚇はしない、と憲法で定めている。軍事力ではなく、外交努力によって、国際紛争を未然に防ぐ、というのが国是である。
この国是を守り通すことは、国際社会で名誉ある地位を占めるゆえんである。それは、世界の状況が混迷しているいまこそ、強く期待されている。TPPは、そこに関わっている。
◇
安倍晋三首相は、日米安保条約の筆頭署名人である祖父の岸信介氏の遺志を引き継いで、憲法第9条を改悪して平和主義を捨て、条約第3条によって軍事力を増強しようとしている。しかし、充分に増強できずに、あいかわらずアメリカの目下の同盟国になって、条約第2条の経済条項に基づくTPPで、日本農業を壊滅させようとしている。
それに対峙するには、平和主義を堅持し、日米安保条約を廃棄して、平和主義に共感する日米平和友好条約を結び、経済条項のくびきを解き放つことである。そのうえで、トラウマを克服し、TPPを拒否して、日本農業の発展をめざすことである。そうして、息子たちを戦場へ送らないことである。
この2つの道の岐路に、TPPがあるし、こんどの参院選がある。
(2016.03.07)
(前回 民主・維新の新党で反TPP大連合を)
(前々回 黒いものは黒い)
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