【准組合員問題】人格認め議決権も2016年4月25日
JAにおける准組合員の事業利用規制は、今後のJA改革にとってアキレス腱である。だが、この問題についてJAは有効な対応策を出せないでいる。その理由は、JAが持つ閉鎖的な組織体質にあると言っていいだろう。
そもそも准組合員制度は、戦前の産業組合(戦時農業会)から戦後の農協法移行に伴って引き継がれてきたもので、矛盾的な存在であり、その位置づけはいずれ明確にされなければならないものであったが、農水省もJAも戦後70年間、これを放置してきた。今回の農協改革が戦後70年の総決算と考えられるゆえんである。
今回、先手を打ったのは農水省であった。今回の農協改革を通じて、自らの官僚制の体質に基づき、JAに対して露骨なまでの職能組合への姿勢をあらわにしてきた(JAは農業振興のみのために存在しているのであり、農業が振興しなければ必要はないと主張)。
それは准組合員のJAからの排除であり、事業利用規制であった。今後、農水省は准組合員を政策対象から外す姿勢を明らかにしている。それは、農協法改正を踏まえた農水省の指導監督指針で、准組合員に関する箇所が削除されていることで明確である。
このように准組合員に対する農水省の態度は明確だが、これに対してJAの対応方策は何も示されず、相変わらずの意味の解らないパートナーという位置づけである。この問題の本質は、「准組合員制度」の大義(農文協から出された書籍の題名)はあっても、准組合員に大義がないことにある。
JAは、せっかく与えられた准組合員制度について、これまで員外利用規制を逃れるためにひたすらこれを利用してきたのであり、自らの組織利益のため、准組合員に対してはその人格を認めないという姿勢を取ってきた。この点で農水省と全く同じ姿勢だったのである。従って、JAがこれまでの姿勢を変えない限りこの問題を解決することができず、農水省の方針に翻弄され続けることになるだろう。
この問題を解決できるJAの方策は、准組合員に人格を認め、農業振興のためともに力を合わせようということだろう。それには、JAは農業者・農家によってのみ構成される組織ではなく農業を支える准組合員によって構成される組織であるという意識転換が必要である。JAには、准組合員に対して「庇(ひさし)を貸して母屋を取られる」と言う閉鎖的な意識があり、これがこの問題の解決を難しくしている。まずはそのようなJAの意識を変革していくことが求められる。
この問題を解決する糸口は、准組合員に人格を認めると同時に議決権を与えるということであろう。JAの組合員は1000万人を超え、そのうちの550万人は准組合員である。この准組合員の力を無視し、排除することで農業振興など考えることはできない。農業振興は農業者・農家だけでできることはないという事実を農水省もJAもよく考えてみる必要があるだろう。
もとより、JAは農業者・農家で構成される組織である。その利益が最優先されと言う理屈があってもいいが、それならば准組合員に対して制限付きの議決権を与えるという措置が取られてもいい。農協法を変えなくても、JA独自の定款改正で、意思反映のための議決権の行使は可能である(例えば議案の成立要件を正准組合員の過半数の賛成で、かつ正組合員の過半数とすれば、正組合員の利益が侵害されることはない)。
農業振興は農業者・農家だけでできることではなく、広く地域の人びとに支えられて初めて可能なことを政府もJAもともに考えるべきだろう。JAは今回の政府による農協改革は、当の農水省が打ち出した、「農業基本法」に代わる食と地域にウイングを広げた「食料・農業・農村基本法」と全く整合性が取れていないことを厳しく糾弾するとともに、自らの意識改革が求められている。
重要な記事
最新の記事
-
飼料用米、稲WCSへの十分な支援を JAグループ2025年10月16日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】本質的議論を急がないと国民の農と食が守れない ~農や地域の「集約化」は将来推計の前提を履き違えた暴論 ~生産者と消費者の歩み寄りでは解決しないギャップを埋めるのこそが政策2025年10月16日
-
死亡野鳥の陰性を確認 高病原性鳥インフル2025年10月16日
-
戦前戦後の髪型の変化と床屋、パーマ屋さん【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第360回2025年10月16日
-
「国消国産の日」にマルシェ開催 全国各地の旬の農産物・加工品が集合 JA共済連2025年10月16日
-
静岡のメロンや三ヶ日みかんなど約170点以上が「お客様送料負担なし」JAタウン2025年10月16日
-
高齢者の安全運転診断車「きずな号」を改訂 最新シミュレーター搭載、コースも充実 JA共済連2025年10月16日
-
安心を形にした体験設計が評価 「JA共済アプリ」が「グッドデザイン賞」受賞 JA共済連2025年10月16日
-
東京都産一級農畜産物の品評会「第54回東京都農業祭」開催 JA全中2025年10月16日
-
JA協同サービスと地域の脱炭素に向けた業務提携契約を締結 三ッ輪ホールディングス2025年10月16日
-
稲わらを石灰処理後に高密度化 CaPPAプロセスを開発 農研機構2025年10月16日
-
ふるさと納税でこども食堂に特産品を届ける「こどもふるさと便」 寄付の使いみちに思いを反映 ネッスー2025年10月16日
-
「NIPPON FOOD SHIFT FES.」に出展へ 井関農機2025年10月16日
-
マルトモが愛媛大学との共同研究結果を学会発表 鰹節がラット脳のSIRT1遺伝子を増加2025年10月16日
-
マックスの誘引結束機「テープナー」用『生分解テープ』がグッドデザイン賞を受賞2025年10月16日
-
北海道芽室町・尾藤農産の雪室熟成じゃがいも「冬熟」グッドデザイン賞受賞2025年10月16日
-
夏イチゴ・花のポット栽培に新たな選択肢「ココカラ」Yタイプ2種を新発売2025年10月16日
-
パルシステムの奨学金制度「2025年度グッドデザイン賞」を受賞2025年10月16日
-
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日
-
鳥インフル デンマークからの家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年10月16日