【読書の楽しみ】第3回2016年6月15日
★佐藤洋一郎
『食の人類史』
(中公新書、993円)
秀才やスポーツ選手が取っている食事の本や糖質制限食の本、あるいはダイエット本のたぐいは相変わらずたくさん出ていますが、人類がどのようにして食を確保してきたのか、改めて頭の中を整理しておくことも劣らず大事なことです。
食の歴史の権威である著者が、手頃な厚さに要領よくまとめていて、農業関係者なら目を通しておいてよい本かと思います。
対象領域はもっぱらユーラシアで、考察される穀物はコメと小麦が主、動物性食品としては肉と乳で、魚にも多少触れています。
まず狩猟、採集から始まり、農耕文化の発展、遊牧文化、牧畜文化、そして融合の過程が述べられるのですが、そこには森や海も当然かかわってきます。農耕もアジアの夏穀(コメ、ヒエなど)とヨーロッパの冬穀(小麦)では対照的な文化が浮かび上がります。
ヨーロッパの食生活についても改めて知るところが多く、「食文化の再認識は風土の再認識である」という結論には大いにうなずかされました。著者の体験談なども随所に書き込まれていて興味深く読めるはずです。
★半藤一利
『マッカーサーと日本占領』
(PHP研究所、1728円)
戦後日本に君臨したマックとGHQが日本に民主主義と属領意識を植え付けたことはその後の日本に功罪両面をもたらしたと言えるでしょう。マックことマッカーサーは雲の上の存在であっただけに、昭和史の第一人者が掘り起こしたその人物像は興味津々です。
日本軍によってフィリピンから敗走した屈辱を「青い目の大君」として晴らす一方で慈父のような一面も見せる複雑な将軍の姿という二面性、天皇との11回の会談における複雑な感情という、ドラマチックな歴史秘話が語られます。天皇の側からの視点も述べられていて、二人の不思議な人間関係も興味を引くところです。
戦後日本から現在の日本への連続性という点でも、この時代の事実関係を知っておくことは大いに意味あることと思います。読み物としても面白いので、気軽に読まれることをお勧めします。
★金田一秀穂監修
『美しい日本語が身につく本』
(高橋書店、1404円)
言葉は大事です。言いたいこと、伝えたいことが言葉一つで大失敗したり、驚くべき効果を発揮したりします。何より言葉の引き出しがたくさんあると心が豊かになります。
最近の言葉の乱れはひどいものですが、言葉が豊かだと、自分と相手の状況、立場、心情に合った雰囲気が出来上がって、とても気持ちのいいものです。
本書はたくさんの心地良い言葉を選んで解説し、使用例を示しています。折り入って、気が置けない、ご放念、心ばかり、忸怩たる、伏して、身に余る、――使ったことありますか。すぐ使えるようにならなくとも、拾い読みしてみる価値は十分にあると思います。
あるいは、流れに棹さす、愁眉を開く、正鵠を射る、役不足、など誤用や誤読も少なくありません。実用性とともに、読んで楽しめる(はず)という点からも、お勧めです。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略 現在の技術で実現可能でしょ(4)2024年4月20日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(7)【防除学習帖】 第246回2024年4月20日
-
土壌診断の基礎知識(16)【今さら聞けない営農情報】第246回2024年4月20日
-
地域複合農業戦略に挑む(2)JA秋田中央会会長 小松忠彦氏【未来視座 JAトップインタビュー】2024年4月19日
-
農基法改正案が衆院を通過 賛成多数で可決2024年4月19日
-
【注意報】さとうきびにメイチュウ類 伊是名島で発生多発のおそれ 沖縄県2024年4月19日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:JA水戸 那珂川低温倉庫(茨城県) 温湿度・穀温 適正化徹底2024年4月19日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ対策を万全に 農業倉庫基金理事長 長瀬仁人氏2024年4月19日
-
食農教育補助教材を市内小学校へ贈呈 JA鶴岡とJA庄内たがわ2024年4月19日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第97回2024年4月19日
-
(380)震災時は5歳【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月19日
-
【JA人事】JA道北なよろ(北海道)村上清組合長を再任(4月12日)2024年4月19日
-
地拵え作業を遠隔操作「ラジコン式地拵機」レンタル開始 アクティオ2024年4月19日
-
協同組合のアイデンティティ 再確認 日本文化厚生連24年度事業計画2024年4月19日
-
料理酒「CS-4T」に含まれる成分が代替肉など食品の不快臭を改善 特許取得 白鶴酒造2024年4月19日
-
やきいもの聖地・らぽっぽファームで「GWやきいも工場祭2024」開催2024年4月19日
-
『ニッポンエール』グミシリーズから「広島県産世羅なしグミ」新発売 JA全農2024年4月19日
-
「パルシステムでんき」新規受付を再開 市場の影響を受けにくい再エネ調達力を強化2024年4月19日
-
養分欠乏下で高い生産性 陸稲品種 マダガスカルで「Mavitrika」開発 国際農研2024年4月19日
-
福島県産ブランド豚「麓山高原豚」使用『喜多方ラーメンバーガー』新発売 JAタウン2024年4月19日