TPPの魑魅魍魎は、まだまだ続く2016年11月10日
毎週木曜日更新
日本でも必死の攻防が続いているTPPだが、大統領候補2人とも反対している米国では今何が進行しているのか?
◆安倍政権の前のめりの前方に待つ3つの魑魅魍魎
米国の大統領選が終わると、いよいよ"レ-ムダック会期"と言われる米国議会が再開される。しかしここには、大きく分けて3つの壁が立ちはだかっている。(1)会期の制約、(2)票読み、(3)共和党幹部が求めている、TPP条文に書かれていない要求の壁だ。
大統領選後の会期は11月14日から始まるが、この間に感謝祭とクリスマスの長期休暇が入る。最優先課題は暫定予算の延長だ。12月9日で期限切れの暫定予算を成立させ、政府機関の閉鎖を回避することが必要となっている。その上でTPP審議だが、下院で最長60日、上院で最長30日、これより短期間での採決には議会の協力が必要だが、かなり壁は高い。
次は票読みだが、「現時点で採決すれば否決は必至、従って審議もしない」と下院議長の共和党ライアン氏は繰り返している。既に12~13名の昨年TPA賛成の下院共和党議員が反対を表明、大統領は民主党のTPA反対議員の誰ひとりTPP賛成に取り込めていない。
そして3つ目の、最大の壁となっているのが次の2つだ。いずれもTPP合意には含まれていない。
◆最優先の生物製剤新薬デ-タ保護期間
第18章知的財産権・51条「生物製剤」の1項(a)では、「最初の販売承認の日から少なくとも8年間、50条の"開示されていない試験デ-タその他のデ-タの保護"の1及び3の規定を準用して実施することによる効果的な市場の保護について定めること」と規定、(b)では、(ⅰ)「最初の販売承認の日から~略~少なくとも5年間~略~効果的な市場の保護について定めること」、(ⅱ)「他の措置をとること」と規定し、いずれかのことを行う、とされている。つまり医薬品メ-カ-による8年間あるいは"5年間プラス何らかの措置"によるデ-タ独占を規定している。
これに対して共和党上院ハッチ歳入委員長は、医薬品業界の意向を受けて、12年間のデ-タ保護期間を各国から約束されなければTPPには反対、と強硬姿勢を貫いている。
途上国には耐えられない薬代負担増が待っている。日本にとっても大問題だ。
◆そして金融取引の"デ-タ・ロ-カリゼ-ション"
第14章電子商取引・1条「定義」の対象者として「金融機関又は国境を越える金融サ-ビスの提供者を含まない」とし、第14章・13条「コンピュ-タ-関連設備の設置」の2項で「各国は、自国の領域内での事業遂行の条件として、対象者に、自国領域内でのコンピュ-タ-関連設備の利用・設置を要求してはならない」と規定している。
金融機関を除外したのは、金融危機の際に当該国から緊急にデ-タを入手して敏速に対応出来るよう米国財務省が反対したためのようだ。
これに対してウォ-ル街が猛反発し、共和党幹部も金融デ-タの保管場所の自由をTPP承認の条件として、強硬な態度を取っている。
米国政府は、この問題をTISAの枠組みでTISA参加のTPP国について決着を目論んでいたが、共和党はTISA非加盟4ヶ国についても同じ内容を求めている。更にEUが反対に回ることで、一層複雑化している。
◆しかし、水面下でのオバマ政権必死の動きに油断は出来ない。
米国政府は、TPPでの再交渉の替わりに、実を取り、それを今後の協定の中で条文化、世界標準化する戦略に転換したようだ。そして米国での報道によれば、主要議員への働き掛け、各国への働き掛けも徐々に進んでいるようだ。
各国が、そしてとりわけ日本政府が早期承認をしても、更には米国議会での承認がされたとしても、米国議会の"承認手続"による要求として上記の壁を取り払う作業は続くと見ざるを得ない。
水面下で今一番の焦点になっている動きは、TPPがくらしや地域のためのものでなく、グロ-バル企業の利害とその意向を受けた政治家のものでしかないことを如実に表している、と断言せざるを得ないのは悲しいことだ。しかし私たちは、暫らくこのようなモノと付き合っていかなければならない。
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