労働力の確保問題で混迷する米国農業2017年2月19日
いつものコンサルタント電話会議の雰囲気とは違う何かが最初からあった。
口火をきったのは西部地域にクライアント(顧客)を多く持つ政策コンサルタント。
◆農業戦略への認識が薄いトランプ大統領
「カリフォルニアの農業は労働力と渇水で悪化し続ける、持続性(サステナビリティ)を担保できない、州南部は州北部の用水配分比率を下げるよう圧力を高めている、米を減産していかないとアーモンドに水を回せない」
「それよりも深刻な問題は労働力の確保だ、説明しよう。
トランプ大統領の選挙戦での農業政策顧問(知事:共和党現職)は、アイオワ・カンザス・ノースダコタ・サウスダコタ・オクラホマ・ネブラスカ・テキサス(元)・バージニア(元)と11農業団体だった、(当然民主党常勝のカリフォルニア州は無視、アーカンソー・ルイジアナ・ミシシッピー・ミズリー州からは意見すら聞いていない。これら除外された州は米国国内米総生産の90%以上を、同時に輸出米の100%を占めている、ちなみにカリフォルニア州の日本米(短粒米)生産量は14万トン、日本へのMA米では中粒米を中食・外食向けに輸出)。
彼らがTPP維持に関して又農業問題に関して提案した草案・起案はすべて白紙に。そもそもトランプ大統領には軍事力を背景とした国家安全保障戦略に次いで、農業戦略(農産物戦略)が食料安全保障リスク回避という観点から米国の第二の対外戦略であるとの認識が薄い」
ここまで一気に話した、普段穏やかな彼が息を切らせて。
◆米国農業を支えるメキシコ人
ノースカロライナ州の失業者数は50万人、米国籍新規農業就労者は0人、外国人季節農業就労者は7000人そしてその大部分がメキシコ人。5年前のこの状況にだれも異を唱えなかった。
今米国農業界で深刻に議論されているのはメキシコ人季節農業就業者の確保、米国の農業労働者の75%が外国人、その75%がメキシコ人そしてその半数以上が不法移民(米国雇用統計の中の農業従事者調査<The National Worker Survey>)。
実際に農業を主業で行っている農家は経営者としてそのほとんどが白人でそのもとで季節労働者が働いているのが今のアメリカの農業。
米国への移民は前回の国勢調査(2011年)の時点で、20年間での増加移民総数が2185万人、そのうちに占めるヒスパニック系が54%、その54%がメキシコから、全体総数の30%をメキシコ人が占めている。
さらに農業・林業(ほぼ農業)に関してはさらに驚くような数字が並ぶ。
全移民総数の1%ではあるが、33万7000人の農業関連移民就労者の内、ヒスパニック系が96%、そのなんと87%がメキシコから。農業関連移民就労者の84%がメキシコからの移民。
◆H2AビザがなくなればGDPは50-90億ドル減
背景は収入にある、メキシコでの農業就労日給が$3に対して米国では正規で$60、不法移民の場合は$20もあるそうだが経営側にとっても就労者にとってもメリットは大きかった、この不当な状況をヒスパニック系不法移民支援団体のアピールもあり前回のオバマとマケインが大統領選で論点として争った。不法移民の取り扱いである。
1200万人のメキシコからの不法移民の内800万人は不法就労をしていることから彼らを不法移民としない為にH2Aビザを特別に季節農業労働者に与えさらに希望があれば、特別労働者プログラム(The Special Agricultural Worker Program)就労回数・年数により合法移民として受け入れる法案が2013年上院にて可決され継続されている、国境警備強化とともにすでに110万人もの不法移民を合法移民として認めている。
この法案が継続されなくなれば米国の年間GDPは$50-90億のマイナスとなるとの試算もされている。
◆複雑な米国のフードチェーン
これだけ深刻な課題をトランプ新大統領は不法移民の受け入れだけでなく季節農業労働者の受け入れ態勢H2Aビザの発給の見直しすら検討を開始するとしている。
労働力をメキシコに頼りながらNAFTAの中で米国国内の農産物は安価なメキシコ産にそのシェアを奪われている。それを人も遮断し、競争力のない物品は高関税で守ろうとするのだろうか。
米国のフードチェーン(食料の生産者から消費者への一連の流れ)は車のバリューチェーン(付加価値を付けた製造から消費者への流れ)よりも複雑だ。
重要な記事
最新の記事
-
令和7年秋の叙勲 西沢耕一元JA石川県中央会会長ら93人が受章(農協関係)2025年11月3日 -
シンとんぼ(166)食料・農業・農村基本計画(8)農業の技術進歩が鈍化2025年11月1日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(83)テトラゾリルオキシム【防除学習帖】第322回2025年11月1日 -
農薬の正しい使い方(56)細菌病の防除タイミング【今さら聞けない営農情報】第322回2025年11月1日 -
酪農危機の打破に挑む 酪農家存続なくして酪農協なし 【広島県酪農協レポート・1】2025年10月31日 -
国産飼料でコスト削減 TMRと耕畜連携で 【広島県酪農協レポート・2】2025年10月31日 -
【北海道酪肉近大詰め】440万トンも基盤維持に課題、道東で相次ぐ工場増設2025年10月31日 -
米の1等比率は77.0% 9月30日現在2025年10月31日 -
2025肥料年度春肥 高度化成は4.3%値上げ2025年10月31日 -
クマ対策で機動隊派遣 自治体への財政支援など政府に申し入れ 自民PT2025年10月31日 -
(459)断食:修行から管理とビジネスへ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月31日 -
石川佳純が国産食材使用の手作り弁当を披露 ランチ会で全農職員と交流2025年10月31日 -
秋の果実王 旬の柿を堪能 福岡県産「太秋・富有柿フェア」開催 JA全農2025年10月31日 -
「和歌山県産みかんフェア」全農直営飲食店舗で開催 JA全農2025年10月31日 -
カゴメ、旭化成とコラボ「秋はスープで野菜をとろう!Xキャンペーン」実施 JA全農2025年10月31日 -
食べて知って東北応援「東北六県絆米セット」プレゼント JAタウン2025年10月31日 -
11月28、29日に農機フェアを開催 実演・特価品販売コーナーを新設 JAグループ岡山2025年10月31日 -
組合員・利用者に安心と満足の提供を 共済事務インストラクター全国交流集会を開催 JA共済連2025年10月31日 -
JA全農と共同開発 オリジナル製菓・製パン用米粉「笑みたわわ」新発売 富澤商店2025年10月31日 -
【スマート農業の風】(20)GAP管理や農家の出荷管理も絡めて活用2025年10月31日


































