農を通じて食と心を耕す日本人2017年3月1日
格差が社会問題となっている。ごく一部の人への富の集中。この先、更に重要性を増すのが相互扶助、協同組合の考え方だと思う。昨年、協同組合の「共通の利益を形にする思想」が高く評価されユネスコの「世界無形文化遺産」に認定された。今の時代背景により認定された感があり、ドイツから申請された。しかし、日本では協同組合が人類の財産とする報道が少なかったのが残念だ。
世界の動向は協同と逆方向に、しかも驚くような出来事が普通に起こり予測不能である。米国のトランプ大統領に関する一連の報道では「ディール(取引)」と「アメリカ・ファースト」という言葉に象徴される。米国のトランプ大統領が日米貿易を不公平と指摘するのは自動車が焦点となっている。しかし、安倍首相の訪米では特別な要求はなかったとのことである。ビジネスマン出身のトランプ大統領のこと。和やかなに2人でゴルフを楽しんでいる時、どんなディールが行われたか気がかりだ。
すでに米国の農業界からは日本に市場開放を迫る声も上がり始めており、もし日米FTAが動き出し、2国間交渉入れば、農業分野において日本に対しTPP以上の要求が促される可能性が高い。
トランプ氏がこだわりの高い自動車貿易攻勢を日本がどう防ぐのか。とんち小坊主の一休さんにまつわる話しがある。ある人が「坊や(一休)は、お父さんとお母さんのどっちが大事だと思うか?」と聞いた。すると一休さんは持っていたおせんべいを半分に割って「おじさん、このおせんべい、右と左をどっちが美味しい?」と聞き返したそうである。
自動車産業と農業。どちらが大切かの綱引き?農業を他産業のディールにされたくないものである。相対交渉では力の強い米国が有利な立場に立つことになるだろう。
※ ※ ※
現在、日本の食料自給率(カロリーベース)は39%と主要先進国の中で最も低い水準。世界が混乱したとき、食料とエネルギー基盤がぜい弱な国ほどダメージを受けやすいことは過去の歴史から明らかである。
食料の安全保障をどう考えるのか、国の使命であり、担っているのは農業者である。
食を守ろうとするJA界に政府方針の流れを振り返ると、JA界はTPP反対をやりすぎた? そんなことはない。我々は、ひるむことなく声を上げなければいけない。安全安心なくして国の発展、産業の発展はないと考える。
JAが協同の力を結集してしっかりと農業と地域を支え、農家所得を確保しなくてはならない。特にこれからの数年間が正念場となる。
※ ※ ※
当JA管内は中山間地で高齢化が進み耕地面積等の条件は、けして恵まれている地域ではない。条件不利地でも過去5年間で夏秋トマトを中心に若い新規就農者が50人以上、農業に汗を流してくれている。彼らを迎えた地元の先輩農業者も、若者たちの農業に対する情熱とこの地で生き抜こうとする覚悟に目を細める。
今後ともぜひ、多くの若者に新規就農者として頑張ってもらいたいものである。たとえ、世界の方向性が「今だけ、金だけ、自分だけ」という格差や競争、自由貿易社会であっても、助け合いの精神や農業を通じて共に生きると言う、忘れかけていた何かを見つけることができるかもしれない。そういう価値観に共鳴する若者も増えていると感じる。
日本人は、ずっと農を通じて食と心を耕してきた。最近、その手を休め始めているのではないだろうか。JAと共に農を通じて食と心を耕し、地域を盛り上げていただきたいものである。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日