【小松泰信・地方の眼力】小農は諦めない2017年4月26日
いやはや、何を考えているのか、ではなく、結局何にも考えていない空っぽ大臣の一人が、本コラムでわざわざ取り上げることさえ憚られる発言で辞任した。決して、無から出てきた発言では無いはず。本音が、それも彼だけではなく、政権全体で共有されている本音が自然に出てきたはず。たぶん、いまでも、どこが、なぜ悪いのか、理解できていないはず。議員辞職はもとより、政界からの引退を求める。このような輩が政治の世界にいる限り、地方はいつまでたっても浮かばれない。
◆協同組合振興研究議員連盟って、あったのですか
4月21日の日本農業新聞一面に〝協組議連が再始動 産業の枠越え法整備検討〟との大見出し。協組議連とは超党派の国会議員でつくる協同組合振興研究議員連盟の略称で、2012年の衆院解散などに伴い活動を休止していた。しかし、農協改革などで協同組合への風当たりが強まる一方、過疎地などでは協同組合に一層の役割発揮が求められる中、協同組合の価値を発信しつつ、産業別ではなく協同組合全体を貫く法整備を検討する、そうである。
新会長の河村建夫元官房長官は、「いろいろな形の協同組合がそれぞれの形で持続的な地域の発展に貢献している。これからの姿をどうあるべきかを考えていきたい」と述べている。記事は「日本で農協改革が加速する一方、各国での協同組合の再評価と活動の活発化が求められており、同議連にも、こうした動きを後押しする期待が集まる」と、締めている。
筆者はこの議連の存在を知らなかった。過日懇談したJAの組合長は勉強熱心な方だったが、御存じなかった。それくらい影の薄い組織といえよう。そりゃそうでしょう。全中が骨抜きにされ、農協法が改悪され、JAグループが世界市場で切り売りされようとする時、惰眠をむさぼっていたわけですから。今頃になって、起き出してくるとは面の皮の厚さが容易に想像される。
当面は働く者が自ら出資し経営するワーカーズコープ(労働者協同組合)法の制定や、協同組合政策の確立を求める国会決議を目指す、とのこと。そんな先の話も結構だが、JAグループに降りかかっている火の粉を払い、鎮火を目指した取り組みに精励すべし。それができないのなら、いつまでもおやすみください。
◆放っておけない公取委の理不尽な命令
そう言えば、同議連の幹事長という要職にある自民党の山田俊男議員は、4月10日の参院決算委員会で、公取委が高知県のJA土佐あきが独占禁止法に違反したとして、3月29日に排除措置命令を出したことを取り上げた。そして、「JAが悪者扱いになっている。決して的を射たことではない」と述べるとともに、「生産者が伝統的に作り上げてきた産地が、わが国の野菜生産を興隆させてきた」として、公取委の理不尽な取り締まり強化を批判している(日本農業新聞、4月11日)。
この問題の詳しい内容については、同JA管内にある7支部園芸部の運営委員長を束ねる、本部園芸運営委員会会長齊藤仁信氏による「公正取引委員会からの口頭注意について」や、4月5日、11日の本JAcomの記事に委ねる。ただ支部員からは、「命令は、青天の霹靂(せいてんのへきれき)。支部員一人一人が不公平感がないように作った規約で注意を受けるなんて」といった、共同販売を否定する内容に不満の声が相次でいることから、「共同販売に関わる問題と受け止め、命令の執行停止と取り消しを求める抗告訴訟を視野に今後の検討を協議している」そうである(日本農業新聞、21日)。
JAグループはどのような支援体制を敷いているのであろうか。最近お得意の、触らぬ神に祟り無しの及び腰ポーズではないことを祈るのみ。このような命令で、協同活動が萎縮することがあってはならない。ぜひ、全国の支援を受けながら抗告訴訟に向かってほしい。その時こそ、協同組合振興研究議員連盟には、命令の執行停止と取り消しに向けた見識と姿勢を目に物見せてほしい。それができない時には、協同組合陣営から協組議連に対して〝排除措置命令〟が下る。
◆小農は強靱
〝挑む「小農学会」〟〝発足1年半、九州でシンポ 議論白熱〟〝大規模化政策「異議あり」〟〝都市住民もつなぎ「市民皆農」へ〟〝「兼業」が未来切り開く〟〝「専業」は総農家数の2割〟〝アイデアで作業工夫 自給高め 食の安全確保〟と、溜飲を下げる見出しのオンパレード。4月25日の東京新聞〝こちら特報部〟が、23日に開かれた小農学会のシンポジウムを取り上げた。
小農学会は、TPPを推し進める政府の農業政策に危機感を持った九州の農家らを中心に2015年11月に発足し、会員数210人。共同代表の一人山下惣一氏によれば、小農とは、〝経営規模の大小や投資額の多寡ではなく、目的によって区分されるもの。暮らしを目的として営まれている農業はすべて小農。利潤追求を目的とすれば大農〟となる。わが国は小農の国であるにもかかわらず、政策によって消滅の危機に追い込まれている。「これはとんでもない間違いであり、社会全体にとっても不幸なことなので何とかしたい」との思いからの学会設立である(『小農』創刊号、2016年4月20日)。
当日、とりわけ熱く語られたのが「兼業農家」の可能性。「兼業農家をつぶすと集落から人がいなくなる」「用水路やため池を共同で管理しているのも兼業も含めた集落の農家。兼業をつぶさず、集落に人がいる状況を続けることは、水や環境を守ることにもつながる」との発言あり。
政府が言う、「強い農業」論にも異論噴出。「多国籍企業の利益のための農政。それで食の安全は保てますか」「政府や農水省は、大規模単一化、輸出促進ばかりに目がいって、自給政策に目を向けていない。農家からやりがいを奪っている」等々。
〝「都民ファースト」の掛け声が嫌な感じなのは、大消費地の傲慢さがにじんでみえるから。東京には富も人も集中するが、その「豊かさ」は地方の疲弊の上にある。原発事故で学んだはずだ。農業の衰退は、ほかならない私たち消費者の問題でもある。小農の輪につながりたい〟とは、東京新聞の面目躍如たるデスクメモ。
小農は、強いだけではなく、しなやかで粘りあり。つまり強靱。闇の中の一条の光明、と見た。
「地方の眼力」なめんなよ
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