(045)アジアの食料不安人口の見通し2017年8月25日
お盆休みの後、米国農務省の報告書「世界の食料安全保障アセスメント:2017-2027」(International Food Security Assessment, 2017-2027)」2017年6月(注1)、に目を通してみた。低・中レベルの所得国76か国について農務省経済調査局が調査した結果である。
これらの国々では食料の多くが穀物を中心としているが、今後10年という期間で見た場合、穀物価格は比較的低い水準で推移するのに対し、対象国のほぼ全てで所得は上昇するという見通しである。その結果、調査対象76か国全体で見た場合、食料不安(food insecure)の状態に直面している人(以下、食料不安人口という)の数と割合は2017年の6億4600万人(17.7%)から2027年には3億7200万人(8.9%)へと大きく減少する点が最大のポイントである。この数字、アジアではどう見積もられているのか。
アジアの調査対象国はアフガニスタンからイエメンまで22か国である。この中にはインドは入っているが中国は含まれていない。これら対象国における食料不安人口は、2017年の3億1500万人(13.5%)から2027年には1億1900万人(4.6%)へと約2億人減少する見込みである。これが本当なら大変喜ばしいことである。
※ ※ ※
さて、アジアの調査対象国22か国を個別に見ていくと興味深い。
まず、2027年にはこれらの多くの国で食料不安人口が大きく減少するが、アフガニスタン、北朝鮮、イエメンの3か国については依然として高水準が継続している。2027年における食料不安人口は、アフガニスタン1060万人(国民の24.6%、以下同じ)、北朝鮮(1080万人、40.9%)、イエメン(3070万人、90.4%)であり、この3か国で5210万人、アジアの調査対象国における食料不安人口の4割強を占めている。
アフガニスタンは1989年に旧ソ連軍が撤退して以降、アフガニスタン紛争、タリバン政権、そして暫定政権樹立を経て2004年にはアフガニスタン・イスラム共和国が成立したが、現在でも日本の外務省は全土に対して退避勧告を継続している。外務省の「海外安全ホームページ(http://www.anzen.mofa.go.jp/riskmap/index.html)では各国の安全情報を4段階(軽い順にレベル1から4まで、注意、不要不急の渡航は止めること、渡航中止勧告、退避勧告)に分けているが、アフガニスタンは現在も「レベル4」(退避勧告)である。
これはアラビア半島最南部にあるイエメン共和国も同様である。イエメンは、古代ギリシャや古代ローマの時代には交易の中心地、そして「幸福のアラビア」として知られていたらしいが、特に2015年の内戦勃発以降は危険な状態が継続している。国内では水道などのインフラが内戦で破壊されたことにより衛生状態が悪化し、今年の5月以降はコレラの感染拡大が止まらない状況という。世界保健機構(WHO)によれば、2017年8月14日時点で2000人近くが死亡、50万人が感染したと伝えられている(注2)。
全土に対する「渡航自粛」という点では北朝鮮も同様である。先のホームページではレベル4の赤色こそついていないが昨今の核ミサイルをめぐる状況を見れば、目的の如何を問わず「渡航自粛」も充分に理解できる。
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一方、先の米国農務省の資料で食料不安が大幅に改善される国はインドである。食料不安人口は2017年の1億3330万人(10.4%)から2017年には1620万人(1.1%)へと1億1710万人減少するという。
筆者は最初、1620万人ではなく1億6200万人の間違い(単純なタイプミス)ではないかと思ったが、附属表だけではなく本文にもこの数字が用いられている。これが本当に正しいとなると、アジアの調査対象国22か国で減少する食料不安人口約2億人の半分強がインドで実現することになる形になる。本当なのだろうか...という思いは消えない。
10年間で食料不安人口が10分の1、さて、これをインドでは難しいと見るか、インドならあり得ると見るか...。当たり前のことだが、食料安全保障とはまさに国の状態と密接に関係していると思わざるを得ない。
(注1)報告書の本文(英文)は以下のサイトで読めます。
https://www.ers.usda.gov/webdocs/publications/84128/gfa-28.pdf?v=42914
(2017年8月21日アクセス)
(注2)WHO,"Cholera count reaches 500,000 in Yemen",
http://www.who.int/mediacentre/news/releases/2017/cholera-yemen-mark/en/
(2017年8月21日アクセス)
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