【読書の楽しみ】第20回2017年11月16日
◎奥野修司・徳山大樹
『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』
(講談社文庫、799円)
なんとも怖くて日本の食が心配になってくる本です。著者は中国の農村や食品加工現場に入り込み、農産物や食品が生産されている状況をつぶさにルポしていきます。日本人バイヤーを装い幹部や現場の本音を聞き出していきますが、最後は大抵口を閉ざされます。
とんでもない食品が生まれる経緯は迫力十分で、著者の挑戦的取材に敬意を表したいと思います。息を止めたくなる悪臭、目を背けたくなる色と印象、常識外の不潔さ、そんな食品がパックされ、日本の外食・惣菜産業向けに送り出されている実情が微に入り細に入り報告されます。
そして学校給食にこれらが大量に入り込んでいる実態が明らかにされ、背筋が寒くなること再三でした。
一方、アメリカ食品は、研究者や官僚の証言を手掛かりに薄気味悪い実態が追及されていて、こちらも不安はぐんと膨らみました。
特に牛・豚・鶏肉に含まれる抗生物質と、牛肉に含まれる女性ホルモン(エストロゲン)の危険が焦点で、後者では若者の乳がん、成長、生殖などへの影響が懸念されています。それとGMトウモロコシが加工食品に大量に利用されている実態も怖い。日本の政と官は何をしているのか。多くの人に読んでもらいたい警世の書です。
◎稲垣栄洋
『スイカの種はなぜ散らばっているのか』
(草思社、1404円)
多くの植物にとって花と種は子孫を残していく最大のカギです。そして種はできるだけ遠方まで行き、かつ分散されることが重要な意味を持つのだとか。
本書は野菜、穀物、果物などの種がどのような意味をもって形をなし、配置され、特質をもつかを紹介していて、自然の巧まざる知恵のすばらしさに感服させられます。
ドングリはわざと不作年を作ってリスやネズミの数を減少させ、おかげで次の豊作年には実が食べ尽くされずにすみ発芽の確率を高めることができる。ニンジンの種には発芽を抑制する物質を含んだ毛が生えていて、秋に出来上がった種がすぐ発芽して凍死しないようになっている。スイカの種はガラス質でなかなか消化されず胃腸をゆっくりと通過するが、これは鳥獣の腹の中で極力、遠くまで運ばれるためである。
といった話が並んでいます。本当に植物は賢い。進化とはそのようなものでしょうが、人類には昨今のように退化とおぼしき傾向も見られます。植物に負けてはいられません。
◎鎌田浩毅
『日本の地下で何が起こっているのか』
(岩波書店、1512円)
半世紀近く前、関西支社に転勤していた筆者は阪神大地震についての原稿を雑誌に掲載したのですが、周りの人たちは口をそろえて「関西は安全だ」と記事は無意味と言わんばかり。でも20年後に大地震が発生しました。三陸大津波も学者の一部は警鐘を鳴らしていたそうです。でもそれが人々に定着するには至らなかった。
そこで著者は、科学的厳密さは多少犠牲にしても、日本の地盤が「大地大変動」の時代に入ったことを国民に理解してもらい、正しく怖がってもらうことを目ざして本書を執筆したと言います。
大地震、大津波、大噴火が日本列島を縦断して起こる、それも数十年にわたって続く可能性が高いそうです。
どの火山、どの構造線、活断層がどの程度危ないか、具体的で、多くの地図や図解があり、科学的知識を要求されないのでとてもわかりやすい。本書を読み一日も早く「自分で」備えることが大事だと痛感した次第です。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(149)-改正食料・農業・農村基本法(35)-2025年7月5日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(66)【防除学習帖】第305回2025年7月5日
-
農薬の正しい使い方(39)【今さら聞けない営農情報】第305回2025年7月5日
-
【注意報】斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 石川県2025年7月4日
-
(442)エーカレッジ(作付面積)から見る変化【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月4日
-
【JA人事】JAながさき県央(長崎県)里山耕治組合長を再任(6月27日)2025年7月4日
-
人的資本を人事制度で具体化する 「令和7年度 人事制度改善セミナー」開催 JA全中2025年7月4日
-
「有機薄膜太陽電池」で発電した電力 ブドウの着色に活用 実証実験開始 山梨県2025年7月4日
-
株主優待制度を新設 農業総研2025年7月4日
-
夏の訪れ告げる初競りの早生桃 福島県産「はつひめ」販売 青木フルーツ2025年7月4日
-
ニッテン「スズラン印」ロゴマークをリニューアル 日本甜菜製糖2025年7月4日
-
「国際協同組合年」認知度調査「生協に参加したい」が7割 パルシステム2025年7月4日
-
洋菓子のコロンバン主催「全国いちご選手権」あまりんが4連覇達成2025年7月4日
-
野菜わなげや野菜つり 遊んで学ぶ「おいしいこども縁日」道の駅とよはしで開催2025年7月4日
-
北海道初進出「北海道伊達生産センター」完成 村上農園2025年7月4日
-
震災乗り越え健康な親鶏を飼育 宮城のたまご生産を利用者が監査 パルシステム東京2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「農政技術(森林)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
神奈川県職員採用「獣医師(家畜保健衛生分野)経験者」受験申し込み受付中2025年7月4日
-
信州の味が集結 JA全農長野×ファミマ共同開発商品 長野県知事に紹介2025年7月4日
-
障害者のやりがい・働きがい・生きがい「ガチャタマ」で応援 パルシステム埼玉2025年7月4日